それは、現か幻か、それとも夢か…-。
ホープは独りきりで、昏い昏い闇の中を漂っていた。
(俺は…-)
音もない世界の中……霞がかる思考で、ぼんやりとあの時のことをたどる。
―――――
〇〇『しゃべらないで! お願い……置いていかないで……!!』
―――――
(俺は……果てたのか)
当然の報いだと、ホープは口の端を薄く引く。
妙に清々しい気分だった。
(〇〇……)
心残りがあるとすれば、最後に見た〇〇の悲しそうな顔……
ホープ「ごめんね」
(でも、大丈夫だ)
彼女なら、もう大丈夫…-。
幼い頃、優しく輝いていた〇〇の光は、あんなにも強いものとなった。
そう思えば、ホープは幸福感に包まれるのだった。
そして…-。
ホープ「ライト……」
自分の半身である彼の名前を、ホープは愛おしさを込めて声に乗せる。
ホープ「……ライト」
もう一度、ずっと呼びたかったその名前を口にする。
そして、ふっと……叱られた子どものように、悲しげに顔を歪めてみせた。
(ライトは……何を思っているのだろう)
―――――
ライト『ホープ!? どうして…-』
―――――
あの時、何も伝えることなく突き飛ばしたライトのことを思うと、わずかに後悔の念が湧き上がる。
(ごめんと、ひとこと言えばよかっただろうか)
だが、それも束の間……
(……ひどく眠い。もう、俺は…-)
安らかな心地で、先ほどから自分を誘うようにたゆたう闇へ、身も心も委ねようとする。
その時…-。
??「ホープお兄ちゃん」
??「……ホープ」
ふと聞こえてきた愛しい者達の声が、ホープの胸を震わせた。
ホープ「……っ」
目を開けば、深淵の彼方に、わずかな光が明滅している。
最愛の兄妹の気配が、ホープの意識を今ひとたび浮かび上がらせた…-。