第3話 下僕へのご褒美

しばらくしてシュニー君は、かわいらしいブーケを手に、こちらへ戻ってきた。

シュニー「ほら、あげる」

凛と咲く清らかな花が美しくて、自然と笑顔になってしまう。

〇〇「ありがとうございます。この花、綺麗だなと思ってたんです」

シュニー「へえ、それに目をつけるなんて悪くないね。褒めてあげるよ」

なぜか誇らしげに眉を上げる彼に、私は小さく首を傾げる。

その時、ふと彼の胸元にある花飾りが目に入った。

〇〇「あれ、もしかしてその飾りは……」

(このブーケの花と同じ……?)

シュニー「やっと気づいたの? これは雪の降る地域しか咲かない花。スノウフィリアから出荷されてるんだ」

聞けば、スノウフィリアとヴィラスティンの間には交易があるらしい。

シュニー「だからフロ兄も、何度か花誓式に出てる。まぁ、今年は僕が任されたんだけどね」

いつも以上に輝く瞳は、兄であるフロストさんから公務を任された喜びが表れている。

〇〇「ふふっ……」

シュニー「……ちょっと、何笑ってるのさ」

頬を膨らませるシュニー君に、私は……

〇〇「わ、笑ってません」

シュニー「下僕のくせに、主人に嘘を吐いていいと思ってるの?」

〇〇「嘘じゃない、です」

シュニー「……本当に?」

こちらを見上げる大きな瞳に、私はわずかな苦笑を浮かべつつ口を開く。

〇〇「あの、とにかく……シュニー君のこと、しっかり応援しますね」

シュニー「別に、お前に応援されるまでもないよ」

そんな話をしながら街を歩いていると…-。

シュニー「あ……」

シュニー君がある看板の前で足を止めた。

クリームたっぷりで甘そうなパンケーキの絵をじっと見つめる彼に、私は思わず笑みをこぼした。

〇〇「おいしそうですね。シュニー君、食べたいんですか?」

シュニー「僕は別に……お前がどうしても食べたいって言うなら、食べてもいいけど」

軽く唇を尖らせて、シュニー君が私の様子をうかがう。

(これってきっと……食べたいってことだよね)

また小さく微笑んでしまいそうになるのをこらえつつ、私は頷いた。

〇〇「はい、食べたいです」

満足そうに口の端を上げたシュニー君と共に、そのカフェに入る。

運ばれてきたパンケーキを早速口にすると…-。

シュニー「ふうん、悪くないね」

そう言いつつも口の端にクリームをつけて、彼はすっかりパンケーキに夢中に見える。

〇〇「イチゴの方も食べますか?」

私はそっとお皿を彼の方へと滑らせる。

すると、シュニー君は不機嫌そうに眉を寄せた。

シュニー「下僕のくせに、主人に自分で食べさせるつもりなの?」

〇〇「え?」

シュニー「成長したと思ったけど、まだまだみたいだね。 ほら、こうするんだよ」

〇〇「……!」

シュニー君は、パンケーキをフォークに刺すと、私の前へそっと差し出す。

私は鼓動が大きく跳ねるのを感じながらも、促されるまま口を開いた。

(ちょっと、照れる……)

シュニー君に食べさせてもらったパンケーキは甘くて、自然と頬が熱くなっていく。

シュニー「これでわかったでしょ。じゃあ、次は僕の番」

フォークを置いたシュニー君に、私は……

〇〇「じゃあ……」

シュニー「ちゃんとそこのイチゴも乗せてよね」

〇〇「は、はい……!」

切ったパンケーキを整った唇へと差し出すと…-。

シュニー「……うん、おいしい」

彼はそう言って、幸せそうに微笑んだのだった…-。

……

パンケーキを食べてひと息吐くと、シュニー君は窓の外に視線を投げる。

シュニー「この後はどこに行こうかな。 ねえ、そういえば下僕はヴィラスティンに来たの、初めてじゃないんだよね?」

〇〇「はい。呼んでいただいて何度か」

シュニー「次はお前の好きな場所に僕を案内してよ。 主人を退屈させないのも、下僕の務めだからね」

当然のように言われて、私はどうしたものかと考えを巡らせる。

その時…-。

??「こんなかわいらしいお嬢さんを下僕とは、感心しませんな」

(え……)

優しい声色に振り向くと、隣の席のおじいさんが目を細めて私達を見つめていた…-。

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