第5話 海を見守る塔の鐘

沈みゆく夕陽が、黄金の輝きを放っている…-。

ダグラス「よし、これでだいたい揃ったかな」

必要なものがすべて台車に積まれていることを確認し、私達は並んで歩き始める。

その時、澄んだ鐘の音が夕空に響き渡った。

ダグラス「もうそんな時間か。急がないと」

〇〇「今の鐘は……?」

ダグラス「『潮見の鐘』って言ってね。海の平和を見守るように、海辺に立っている塔の鐘の音だよ」

ダグラスさんの指さす先には、白くそびえる塔があった。

〇〇「美しい塔ですね」

ダグラス「青空にもよく映えるけど、夕焼けの包まれるとなおさら美しく見える」

ダグラスさんは満足げに、遠くの塔を見つめた。

〇〇「毎日この時間に鳴るんですか?」

ダグラス「ああ。普段は日が落ちる時間に、毎日一度なるんだよ。 ただ、一年の最後の日……つまり、今日は一晩中鳴るんだ。 この一年が無事に過ぎ去ったことへの感謝の気持ちを込めてね」

(少し違うけど……除夜の鐘みたいなものかな?)

元いた世界に似た風習が、どこか懐かしい気持ちにさせる。

ダグラス「ただ、ここ最近では鐘を鳴らすと願いが叶うなんて言われ始めてね。 そういう意味で鳴らしに来る人も多いんだ」

〇〇「願いが叶うなんて、素敵ですね」

目を輝かせた私に、ダグラスさんは優しく微笑み返す。

ダグラス「やっぱり〇〇も、そういうのが好きなのか」

〇〇「はい。あ、それから……私がいた世界にも、除夜の鐘っていうものがありました」

ダグラス「除夜の鐘?」

ダグラスさんが小さく首を傾げる。

〇〇「新年にかけて、金を108回鳴らすんです」

ダグラス「へえ? どうして108回?」

〇〇「えっと、人間は108つの煩悩を持っていて、それを祓うため……って聞いたことがあります」

ダグラス「108? 人間はそんな煩悩まみれなのか……俺もかな?」

〇〇「え?」

視線がぶつかり、心臓が大きく打ち鳴る。

ダグラス「……まあ、俺もか」

ダグラスさんに艶っぽく微笑まれ、頬が熱くなる。

港には、セント・ガブリエル号の影が長く伸びている。

すぐそこまで迫った新年に、私の胸は、わくわくと弾んでいた…-。

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