第2話 新年のために

港には、ダグラスさんの船であるセント・ガブリエル号が停泊している。

(相変わらず立派な船だな)

感心して船を見上げると、甲板から船員さん達が顔を覗かせた。

船員1「お頭がお帰りだー!」

船員2「姫様! 姫様も一緒だぞー!」

わいわいと楽しげな声が降り注ぎ、私とダグラスさんは顔を見合わせて笑みを漏らす。

ダグラス「ほら、賑やかな奴らだろう?」

〇〇「ふふ、そうですね」

タラップへと足を踏み出した時……

ダグラスさんが私の前に回り込み、大きな手を差し出した。

ダグラス「さあ、お手をどうぞ。お姫様」

〇〇「っ……ありがとうございます」

ダグラスさんにエスコートされ、くすぐったいような気持ちでタラップを渡る。

けれど、慣れていない船の揺れに、足元がふらついて……

ダグラス「おっと……大丈夫かい?」

優しい声が耳に流れ込み、彼を見上げると……

すぐ傍に、エメラルドグリーンの瞳があった。

(顔が、近い……)

ダグラス「危なっかしいお姫様だな」

長い腕が私の肩に回り、ダグラスさんがまとう潮の香りが私を包み込む。

彼の熱が伝わり、胸がどきりと音を立てた。

〇〇「すみません……!」

急いで体勢を立て直す私を見て、ダグラスさんが楽しげに笑った。

ダグラス「ははっ、そんなに慌てて離れなくてもいいのに。 顔が真っ赤だ。君はいちいちかわいいね」

顔を伏せた私を、ダグラスさんが覗き込んだ。

その余裕にある笑みに、私の胸はまた音を立てるのだった…-。

……

甲板に上がると、あっという間に船員さん達が集まる。

船員1「まさか姫様を連れて帰ってくるなんて」

船員2「さすがお頭ですね!」

船員さん達から、口々に冷やかしの声が飛ぶ。

ダグラス「そんなこと言って、お前達だって嬉しいだろ?」

ダグラスさんがさも当然な笑みを見せ、船員さん達はさらに盛り上がる。

そんな光景に、思わず笑みが漏れた。

〇〇「仲がいいんですね」

ダグラス「そうかい? まあ、いつも一緒にいるからね」

(ダグラスさん、なんだか嬉しそう……)

そうして、私達を迎えるために集まってくれた船員さん達は、各々持ち場へと戻っていく。

皆、手にはモップやほうきなどの清掃用具を持っていた。

(あれ? もしかして大掃除かな?)

首を傾げて彼らを見つめていると……

ダグラス「新年は新しい気分で迎えたいからね。一年の最後の日は、船をピカピカに磨き上げるんだ。 この一年の感謝も込めて」

ダグラスさんが、広々とした甲板を見渡して目を細める。

潮水に濡れた甲板は、太陽の光を浴びてきらきらと輝いていた…-。

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