それから、私達は幾度となく、夜のダンスパーティーを楽しんだ。
そして今日も待ちわびた夜になり、私はグウィードさんのもとへと走った。
ドアを三回ノックする。
〇〇「花言葉は……『エレガント』」
グウィード「そして『豊かな感受性』。いらっしゃい子猫ちゃん◆」
扉が開き、温かな室内に通される。
グウィード「寒かっただろう?」
冷えた体を、彼が柔らかなブランケットで包んでくれる。
〇〇「ありがとうございます」
グウィード「どういたしまして、こちらにどうぞ♪」
暖炉のそばに座ると、グウィードさんが温かいティーカップを手渡してくれる。
グウィード「どうぞ。これを飲むと温まるよ♡」
一口飲むと、紅茶の中にほんの少し甘い香りがする。
〇〇「おいしい……これ……」
グウィード「少しだけブランデーが入ってるんだ。 気に入ってくれてよかった◆」
彼の穏やかな声が、胸の奥まで温めていく。
その時……
グウィード「子猫ちゃん」
グウィードさんが一輪のミモザを私にかざした。
次の瞬間、それは花冠に変わっていた。
〇〇「わっ!すごい……」
私の頭に花冠を載せると、グウィードさんが満足そうに微笑む。
グウィード「可愛い子猫ちゃんにピッタリだよ」
(可愛いって……)
思わず顔が熱くなり、私は隠すようにうつむいた。
グウィード「ほら、顔を上げて。僕に可愛い顔を見せて◆ ミモザの花言葉には、ほかの意味もあるんだよ」
〇〇「なんですか?」
グウィード「さあ、なんだろう?」
〇〇「えっと……誠実?」
あてずっぽうに、思いつく言葉を口に出してみる。
グウィード「残念、違うよ♧」
〇〇「幸福とか……」
グウィード「それはクローバー。いい言葉だよね」
〇〇「なんだろう……」
彼がクスクスと楽しそうに笑う。
けれどその表情が、一瞬にして険しくなった。
グウィード「見つかったか……」
素早く立ち上がると、彼が仮面を付け直す。
そして、手際よく暖炉の火を消した後……
〇〇「グウィードさん?」
素早く私を抱き寄せ、グウィードさんが物陰に隠れた。
〇〇「……何が起きているんですか?」
グウィード「しっ、静かに……」
〇〇「っ……!」
私の口を手で覆い、グウィードさんが囁く。
その時、扉が破られ銃声が響き渡った。
グウィード「まったく、乱暴な人達だ……。 ごめんね、少し怖い思いをするかもしれない」
そう囁くと、グウィードさんは私をしっかり抱いたまま物陰から飛び出して、窓を突き破った。
〇〇「!!」
追手「逃げたぞ! 追え!」
私を抱え、グウィードさんが屋根を伝い走る。
その下には、銃を構えて私達を追って来る数人の男性の姿があった。
(怖い……)
胸にしがみつくと、彼が耳に顔を寄せた。
グウィード「大丈夫。目を閉じていてごらん。いい子にしていたらすぐに終わるから」
〇〇「はい……」
目を閉じて、彼の胸に顔を押し当てる。
驚くほど穏やかに波打っている彼の鼓動が、私を安心させてくれた…-。