雪の国・スノウフィリア 白の月…―。
指輪から放たれる閃光に包まれ、その人は長い眠りから目を覚ました。
誇り高いことで知られる、雪の国の一族の王子……
グレイシア「ん……ここは……」
真冬の雪を連想させる光り輝く銀髪に、淡いブルーと白の装束。
全身を寒色に包まれた中で、瞳だけが宝石のように爛々と赤く輝いている。
グレイシア「お前が……俺を眠りから覚ましたのか?」
彼に事情を説明すると…―。
ふうん……と鼻を鳴らしながら、怜悧な視線が見定めるように私の顔をなぞってゆく。
遠慮のない視線に、どきりと胸が脈を打つ。
○○「あの……大丈夫ですか?」
名前がわからず、呼びかけに迷ってしまう。
グレイシア 「グレイシアだ。 別になんともない。目覚めさせてくれたことには礼を言う。けどそれだけだ」
○○「は、はい……」
(グレイシア……君)
(機嫌が悪いわけじゃないみたいだけど……なんだか怖い)
グレイシア「お前がトロイメアの姫だろうが、俺は……高潔なる雪の一族は媚びたりしない」
やや横柄な態度を取るグレイシア君に面食らっていると、
彼は膝についた雪を払い歩き出した。
その行先は…―。
(あれ?確かそっちは、お城と反対方向)
○○「お城へ戻らないんですか?」
グレイシア「……」
しかし彼は私を一瞥しただけで、
そのまま城とは正反対の方角…スノウフィリアの城下町へ歩きだす。
○○「ま、待ってくださ…―」
思わず追いかけようと踏み出した足を、新雪が絡め取る。
○○「あ……!」
次の瞬間、バランスを崩した私の体は…―。
グレイシア「何やってるんだよ、お前。トロくさい奴だな」
スノウフィリア君の細くてしなやかな、けれど逞しい腕が、しっかりと私を支えていた…-。