第2話 溢れる欲求

収穫祭の飾りに彩られた街に、たくさんの人達の笑い声が響いてくる…-。

ヴァスティ「……さて、〇〇。どこか行きたいところはあるか?」

〇〇「そうですね……」

ちらりと、大量の荷物を抱える彼の従者さん達を見やる。

(ヴァスティさんも従者さん達も、荷物をいっぱい抱えてるし……)

〇〇「一度、滞在先に荷物を置きに行きませんか?」

ヴァスティ「なんだ?荷物など…-」

その時、従者さん達の方を振り向いたヴァスティさんの目が、何か別のものを捉えた。

ヴァスティ「! あの店……奇妙な商品が置いてある。見に行ってみよう」

言うや否や、ヴァスティさんは足早に街の一角に並ぶ店へと向かう。

〇〇「あ、ヴァスティさん……!」

(速い……!)

私と従者さん達は、慌てて彼の背を追ったのだった…-。

……

(……大丈夫かな)

宿に着くまでの間も、ヴァスティさんは買い物を続けた。

その結果、さらにたくさんの荷物が増えてしまい……

従者さん達は息を切らせながら、それらを運んでいた。

ヴァスティ「どれも俺のコレクションだから、大切に扱えよ」

彼自身も荷物を運びながら、従者さん達に声をかける。

(……大変そう)

〇〇「あの、私もお手伝いします」

黙って見ていられず、荷物に手を伸ばすけれど……

ヴァスティ「必要ない。女に手伝ってもらうほど、あいつらはやわじゃない。 それに、お前にそんなことをさせるわけにいかないだろう」

そう言って、ヴァスティさんも従者さんと一緒に荷物を運んでいく。

ヴァスティ「よし、これで最後だな。なんだ、思ったよりも少ないな」

彼は涼しい顔で、積み上げた荷物を見上げている。

(充分な量だと思うけど……)

ヴァスティ「審判の国や地の国以外で出かけることが少ないからな。ついコレクション欲が疼く」

ヴァスティさんの部屋に並べられた数々のコレクションを思い出す。

(でも、ヴァスティさんらしいかな)

従者さん達も同じことを思っているのか、私達は顔を見合わせ微笑み合った。

ヴァスティ「この公務の間、俺のコレクションが充実していくに違いない。いい気分だ」

満足そうにそう言った後、彼は改めて手に入れた物を眺め……

ヴァスティ「それにしても、噂には聞いていたが、ロトリアの収穫祭はすごいな」

まるで少年のように笑う彼に、また頬が緩んでしまう。

すると…-。

ヴァスティ「国ごと全部、俺のものにしたいぐらいだ」

(国ごと……!?)

驚いていると、ヴァスティさんが私に視線を送ってきた。

ヴァスティ「お前はなんでも真に受けるな」

〇〇「あ……」

(冗談だったんだ……本気かと思った)

ヴァスティ「さすがに国を……というわけにはいかないが。 それぐらい、素晴らしいということだ」

彼はロビーから外の街並みを見つめ、満足そうに頷く。

(なんだか、楽しい収穫祭になりそうな予感がする)

彼の横顔を見つめていると、不意にヴァスティさんがこちらを振り返った。

ヴァスティ「……よし」

〇〇「……!」

ぐいと手を取られたかと思うと、そのまま彼は出口の方へと歩き出す。

ヴァスティ「身軽になったことだし、街で俺にふさわしい衣装を手に入れよう」

(……忙しい日にもなりそうだけど)

そんなことを思いながらも、私の胸は期待でドキドキと高鳴っていた…-。

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