第5話 縁包み

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男2『未の一族の……女好きで有名な?』

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先ほどの男性の言葉が耳にこびりついて、なかなか離れない。

そんな私に気づいたのか、隣を歩くヒノトさんが私の眉間に人差し指で触れた。

ヒノト「しわ、寄ってるよ」

〇〇「……!」

ヒノト「ちょっとむくれた君もかわいいけど……俺としては、笑顔が見たいかな」

〇〇「ヒノトさん……」

彼の優しい微笑みにつられるように自然と頬が緩む。

ヒノト「うん。かわいい」

そんな話をしながらしばらく歩くと……

ヒノト「ほら、ここだよ。着いた」

彼が足を止めたのは、伝統的な雰囲気を醸す小さな木造の店の前だった…-。

足を踏み入れた瞬間、床に所狭しと並べられた金や銀、白に赤といったさまざまな色の袋が目に入った。

よく見ると、袋の中央には羊の刺繍が施されている。

〇〇「これって……?」

ヒノト「『縁包み』っていうんだ。種類の違う反物や小物をまとめて売る。 中に何が入っているか、どんな物と縁があるかは、買ってからのお楽しみ。 明後日から売り出す予定で、今は最後の準備中だよ」

たくさんの縁包みを前に、私は……

〇〇「素敵ですね。私も欲しいくらいです」

ヒノト「本当? じゃあ君のために一つ、取り置きしておかないとね」

(福袋みたいで懐かしいな)

元いた世界の初売りを思い出していると、商人らしき女性がにこにこと笑みを浮かべて袋を一つ手に取った。

商人「縁包みは、ヒノト様が数年前から始められた取り組みなんですよ」

〇〇「ヒノトさんが?」

商人「はい。今では女性の間で、この時期の定番商品になっておりまして。 買い物が趣味だというヒノト様ならではの素敵な発想ですよね」

ヒノト「ふふっ、そう言ってもらえると嬉しいよ。ありがとう」

ヒノトさんがにっこりと優雅な笑みを彼女に返す。

ヒノト「でも、そろそろ新しい変化を加えないと飽きがくると思ってて……。 何かいい案がないかなって考えてたんだよね」

ヒノトさんは文字通り、考え込むように大きな手を口元にあてて、長いまつ毛をそっと伏せた。

ヒノト「縁包みはね、こよみの国だけじゃなくて他国の人も楽しみにしてくれてるんだ。 でも、今よりもっとたくさんの人に買ってもらって、この国の文化に触れてもらえるような……。 そんな商品にしたい」

遠くを見つめるように目を細めたその横顔に、胸がとくんと音を立てる。

ヒノト「……〇〇、どうしたの?」

思わず見とれていた私に気づき、ヒノトさんが首を傾げる。

〇〇「あ……いえ、この国のこときちんと考えてて、ヒノトさんすごいなって思ったんです」

ヒノト「ありがとう。君がそう言ってくれるのが、やっぱり一番嬉しい。 あ、そうだ。君は、どんな要素があれば面白いと思う?」

彼の瞳は何かを期待するように輝いていて……

私は緊張で背中に汗が伝うのを感じながらも、必死に頭の中で考えを巡らせるのだった…-。

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