第2話 彼とめぐる空

空の上から見下ろす街は、まるでおもちゃ箱のように小さく見える。

フリュス「どう、美しい国でしょう?」

私は、フリュス君に手を取られ、空を旅していた。

(なんで私まで浮いていられるんだろう?)

〇〇「フリュス君、あの…-」

フリュス「あ! 絶対に僕の手を離しちゃダメだよ。風が乗せてくれなくなっちゃうから」

〇〇「風に乗る?」

フリュス「そう。この国の王族は、風に乗ったり、風を使ったりできるんだ。風と友達だから。 僕と手を繋いでいる間は、〇〇ちゃんも風と友達でいられるよ」

〇〇「風と……素敵だね!」

フリュス君は満足そうに笑うと……

フリュス「あっ」

次の瞬間何かを見つけて、下降を始めた。

フリュス「見て! 移動式遊園地だ!」

急激に地面に近づいていく感覚に、声を出すことも忘れ、フリュス君の手を握った。

〇〇「フリュス君、お願い! もう少しゆっくり……!」

フリュス「あ、ごめんね。怖かった?」

フリュス君は無邪気に私の瞳を覗き込んだ。

フリュス「あっ! ちょっと見て! 遊園地より面白いもの見つけちゃった!」

フリュス君は、突然瞳を輝かせ、楽しそうに笑う。

次の瞬間には私の手を引いて、今度は勢いよく空の高みへと舞い上がった。

すると……

〇〇「あっ!?」

分厚い雲の中に突入し、私達は突然の雨に見舞われる。

フリュス「あはははは! あー気持ちいい」

激しい雨に濡れながら、フリュス君は雨雲の中をふわふわと飛び回った。

フリュス「ね? 〇〇ちゃん」

嬉しそうに顔中で笑いながら、彼は私を振り返る。

あまりに突然のできごとに、何も言えずにいると……

フリュス「……!」

フリュス君は私から目をそらし、すごい勢いで私を引っぱり、雨雲を出た。

〇〇「フ……フリュス君!?」

私の呼びかけに振り返ることもなく、彼は私の手を引いて飛び続ける。

(突然、どうしたんだろう?)

恐ろしいほどの早さで飛び続けることしばらく…-。

私達は、大きな窓から城の中へと降り立った。

〇〇「ここは……?」

訪いも告げずに窓から入り込んだことに、少し居心地の悪さを感じる。

すると部屋を整えていたメイドさんが、あわててこちらへと駈けてきた。

メイド「まあ、フリュス様、姫君。 フリュス様、また雨雲に入って遊んでいらしたのですね?」

フリュス「お風呂に入れてあげて。服が……その」

そこまで言って、フリュス君は突然に頬を赤らめる。

(もしかして……!)

あわてて見下ろすと、雨に濡れたブラウスが透けてしまっていた。

〇〇「……っ!」

フリュス「一瞬しか見てないから大丈夫! ずっと背を向けてたから」

言い訳をするように、フリュス君は早口で言い募る。

メイドさんがあわてて私にタオルを掛けてくれた。

(そういえば……)

雨雲を出てから、フリュス君が私にずっと背を向けていたことを思い出す。

フリュス「……ごめん」

彼は顔を伏せたままそう言って、大人びた様子で膝を曲げ、お辞儀をした。

フリュス「じゃあ、また」

ふわり…-。

小さな風をつかまえて、フリュス君が窓からすべり出していく。

照れたような後ろ姿は、私の胸をじんわりと暖めていった。

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