第3話 「かわいい」全開!

パーク内のいたるところに、ファンタジックな映画の世界が広がっている…―。

万里くんに手を引かれ歩いて行くと、やがてパークの奥にドーム状の大きな建物が見えてきた。

万里「○○ちゃん、あそこです!」

万里くんは待ちきれないといった様子で、足早にその建物に向かったのだった…―。

中に入ると、まぶしいライトに照らされた大きなステージが目に飛び込んできた。

○○「随分と大きな場所なんですね」

3Dシアターの中では、数人のスタッフさんが上映に向けての最終調整をしているらしい。

スタッフ「万里様! お疲れ様です」

万里「準備の進みはいかがですか?」

スタッフ「3D投影機材の方がまだですね」

○○「投影機材?」

私の質問に、スタッフさんの代わりに万里くんがにこやかに答える。

万里「このアトラクションの3D映像は新開発の立体ホログラムなんです。 裸眼でもリアルな立体映像に見えることで、話題なんですよ」

○○「すごいですね! 万里くんの映像ってこれだったんですね。 じゃあ、立体の万里くんに合わせて、着ぐるみのぱんだちゃんも役者さん達も…―」

万里「はい。まるで本当の私と一緒に動いてるみたいにアクションするんです」

(すごい……実際に見たら、どんな感じなんだろう!)

胸をわくわくと弾ませていると…―

万里「……!」

一瞬にして、万里くんの顔がほころぶ。

(あ……!)

ちょうど、ステージの奥から着ぐるみのぱんだちゃんが現れた。

○○「かわいい!」

丸い輪郭に、つぶらな瞳……短い足で器用に歩く姿が、とても愛らしい。

万里「本当に……っ」

感極まった声を上げた万里くんだったけれど、周りのスタッフさんを見て精悍な表情を取り戻した。

万里「ええと……○○ちゃん。スタッフの方々の邪魔をしても悪いですし。 昼にはプレオープン初となる公演がありますから、それまでパークを見て回りましょうか?」

○○「そ、そうですね」

万里「え、ええ……」

返事はするものの、万里くんの視線は、隙あらば着ぐるみの方に向いてしまう。

万里「ものすごく……かわいい」

心の底から放たれた彼の声は、私の耳にだけ届けられた…―。

万里「っ、とにかく行きましょう」

(万里くんも……なんてかわいいんだろう)

手を振ってくれているぱんだちゃんに後ろ髪を引かれながら、私達は3Dシアターを後にした…―。

その後、個性的なエリアで構成されるパークを、万里くんと一緒に回った。

万里「このアトラクションは、ドキドキしましたね!」

○○「最後のところ、万里くんが全速力で漕いでくれなかったらどうなるかと思いました……!」

そのアトラクションはジャングルをボートで回るもので、最後には自分達の力で巨大ワニから逃げ出さなければならなかった。

万里「おかげさまでいつも鍛えていますから。体力には自信があるんです」

そう言って腕まくりをして、しなやかに伸びる腕を見せてくれる。

(逞しい腕……)

スクリーンで躍動的なアクションを繰り広げる、彼の勇ましい表情を思い出す。

○○「やっぱりアクションスターって格好いいですね」

(けど、今は……)

私に無邪気に笑いかけてくれる彼の表情が、すごく特別に思えて…―。

万里「……○○ちゃん、そんなに見つめられると……」

○○「あ……す、すみません!」

(つい……じっと見ちゃってた)

万里「の、喉が渇きましたね……そうだ、あそこに行きましょう!」

微かに頬を赤くした万里くんが指差したのは、キノコ型の屋根が特徴的なカフェだった。

……

万里「これはまた随分とかわいいものを頼むんですね」

私が注文したホイップとイチゴソースをたっぷりのせたアイスラテを、万里くんが見つめる。

○○「万里くんもですよ」

万里「そう……ですか?」

彼の頼んだコーヒーも、ホイップの上にカラフルなチョコスプレーがまぶされていた。

少し恥ずかしそうに、万里くんが首の後ろを掻く。

万里「こういうのって、男一人じゃ、なかなか頼めないですから……。 けど、今日なら○○ちゃんが隣にいるので平気です」

彼は柄の長いスプーンですくったホイップを嬉しそうに口元に運ぶ。

それを見て、私も同じようにホイップを口に運んだ。

すると……

万里「あ、口のところホイップが」

○○「え?」

彼はポケットからハンカチを取り出すと私の唇の端をぬぐった。

そのハンカチに。細やかな刺繍が施されているのを見て……

○○「この刺繍って万里くんが? すごくかわいくできてますね」

万里「ありがとうございます……でも褒められると、少し恥ずかしいですね。 あまり男らしくない趣味だとは自分でも思うので」

彼は困ったように笑い、ハンカチをポケットにしまい込む。

(胸が……)

くすぐったさに視線を逸らした先に、とあるショップが見えた。

○○「あ、あの先にあるのって……」

万里「……!」

瞬間、万里くんの目が大きく見開かれる。

万里「このパークのマスコットキャラショップみたいです! 行ってみましょう!」

○○「え!?」

言うや否や、彼は私の手を取り、颯爽と歩き出した…―。

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