第2話 『アリス』の存在

ドーマウス『あれぇ? アリスちゃん、また来たの……?』

(アリス……?)

私がじっと見つめると、ドーマウス君は眠そうな目をかすかに見開く。

ドーマウス「あれれ……? アリスちゃん……じゃない……?」

私を見て、頭からちょこんと生えた丸い耳を動かす。

だけどすぐにウトウトし始めて……

ドーマウス「……!」

彼はハッとして、柔らかそうな頬を自分の両手で叩いた。

ドーマウス「じゃあ、あなたは……誰……?」

○○「私は○○。この前、あなたをこの近くの草原で目覚めさせて…-」

ドーマウス「○○ちゃん……ほんとだ、よく見たらアリスちゃんとは違う……」

ゆっくりと経緯を説明すると、なんとか納得してくれたようだった。

だけどドーマウス君はやっぱり具合が悪そうで、時折ゆらゆらと頭を揺らし、唸るような声を上げる。

○○「ド、ドーマウス君……寝ないで!」

ドーマウス「うん……大丈夫だよ……だって、僕、眠れないの……」

○○「眠れない?」

ドーマウス「うん……。 僕、アリスちゃん……あ……間違えちゃった……ええと……。 ○○ちゃんに起こしてもらってから、なんか不眠症? になっちゃって……」

彼は長い袖からのぞく指先で服の裾を掴み、うつむいた。

その様子は、小動物がしゅんと落ち込むようにも見えて……

○○「そうだったんだね……」

ドーマウス「……?」

自然に伸びた手で、彼の柔らかくて天使のようなまき毛を、労わるように撫でてしまった。

ドーマウス「心配してくれるの……? えへへ……○○ちゃん、アリスみたいに優しいね……」

(さっきから、アリスって……誰のことなんだろう?)

大きな目を糸のように細くして、ドーマウス君は無邪気に笑う。

それはどこまでも無垢で可愛い、心が温かくなる笑顔で……

ドーマウス「あれ? でも、あなたがアリスちゃんじゃないなら……アリスちゃんはどこ?」

○○「私には、わからないけれど……アリス?」

(ドーマウス君の知り合いとかかな?)

ドーマウス「この前ね、お茶会で友達のマーチアくんとマッドハッタ―さんにね、すっごくからかわれたの。 でもその時、アリスちゃんが、僕のこと、かばってくれたんだぁ……。 だから僕、アリスちゃんにお礼、言わなきゃいけないんだけど……どうしよう」

お尻から生えた尻尾が、左右に力なく揺れる。

(マッドハッタ―って……まさか、おとぎ話のアリスのこと?)

(そうだ、ここは『不思議の国』だって……)

私は頭の中に、自分が読んだ『不思議の国のアリス』のことを思い出す。

○○「そのアリスさんの家は、どこにあるの? 連絡先は?」

でも、ドーマウス君は何を聞いても首を左右に振るばかりだった。

ドーマウス「……どうしよう……僕……いつも寝てばかりだから、何も覚えてないよ……」

次第に、またうつらうつらとし始めた彼を見て……

○○「私も一緒に探そうか?」

好奇心からなのか、私は自然に彼にそう提案していた。

ドーマウス「いいの……? ○○ちゃん……やっぱり、とっても優しいね」

こうして私とドーマウス君は一緒に『アリス』を捜しに行くことになった…-。

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