第1話 チルコの巡業

道化の国・カルナバーラ 薫の月…-。

この国で、もうすぐチルコ・サーカスの公演がある。

それはクラウンさんからの直々のお誘いで……チルコの皆にとっては、晴れ舞台と呼べるものだった。

(皆、張り切ってるだろうな)

練習に精を出す彼らの様子を思い浮かべながら、カルナバーラの街を歩く。

(モルタさんの空中ブランコも、楽しみだな)

宙を華麗に舞う彼の姿を想像した、その時だった。

??「よそ見をしていると危ないですよ?」

聞き覚えのある声が聞こえて振り返ると、そこには……

〇〇「モルタさん……!」

モルタ「あなたが迷われているのではないかと、気がかりで。 この街は目を引くものが多いですから」

〇〇「迎えにきてくれたんですね。大事な公演の前なのに、すみません……ありがとうございます」

モルタ「いえ、後は仕上げを残すのみですから。 カルナバーラで公演できることになり、皆気を引きしめています。 何よりあなたにも見てもらえたら、弟達も喜ぶでしょう」

モルタさんの頬が、柔らかに緩められる。

その表情は弟さん達への慈愛に満ちていた。

〇〇「はい! 今回の公演、楽しみにしていますね」

モルタ「……ええ。今回の公演は、きっと特別なものになるでしょうから」

そう言った彼の表情に、ふと陰りが落ちる。

(モルタさん……?)

モルタ「さあ、参りましょう」

けれどそれは一瞬ことで……モルタさんはすぐにまた、唇に微笑を乗せるのだった…-。

……

そしていよいよ、チルコ・サーカスの公演の日を迎えた。

モルタさん達はいつものように、次々と華麗な演技を決めるけれど…-。

(……?)

私は、観客達の様子に違和感を覚えていた。

拍手や歓声はあれど、会場にはどこか静かな空気が流れていて……

観客「かわいいな。まさに子どものサーカスって感じだ」

〇〇「……!」

観客からこぼされる感想に、私は言葉を失った…-。

第2話>>