ダグラス「そう、宝探し。こっちは逆に海賊っぽいだろ?」
ダグラスさんが、海上や陸上の治安維持に努める傍ら、宝探しをしていると聞き、私は瞳を輝かせる。
ダグラス「いい目をしている……。 普通、女の子はこういう話にはあまりピンとこないかと思っていたけど」
顎に手をあてながら、ダグラスさんは私に顔を近づける。
ダグラス「君には……海賊の素質があるのかな?」
〇〇「え、えっと……」
ダグラス「ごめんごめん、ちょっとからかっただけだよ」
小さく笑って、ダグラスさんはまたワインを口に含むけれど…-。
ダグラス「……」
(あれ……?)
徐々に彼の顔から笑みが消えて、寂しげに視線が落とされる。
〇〇「ダグラスさん?」
ダグラス「ああ……ごめん。ぼーっとしてた」
彼のその瞳は、どこか哀しげに見えた。
ダグラス「……気になる? 俺のこと」
〇〇「!!」
いつの間にか、彼をじっと見つめていたことに気づいて、私は慌てて視線を逸らした。
ダグラス「本当にかわいいな、君は」
一つ大きく息を吐いた後、彼は窓の向こうの海に視線を向けた。
ダグラス「実は、親父の形見を探しているんだ」
〇〇「……お父様の?」
ダグラス「ああ、お袋に……プレゼントしたくて」
瞳に寂しげな影を落としたまま、ダグラスさんは静かに話を続ける。
ダグラス「俺がまだ幼い頃、天候不良で船が難破して、荒れ狂う海に皆で投げ出されたんだ。 その時、親父は命をかけて、母と俺を守った……でも、行方はいまだにわかっていない。 きっと……この広い海のどこかに親父はいるんだ。 親父のことを思い出して時折寂しそうにしているお袋を見ると、さすがに俺も胸が苦しくなる」
(そんなことが……)
切なげに海の彼方を見つめるダグラスさんの横顔が、私の胸を締めつける。
〇〇「……」
何も言えずにいると、不意にダグラスさんの優しい微笑みが私に向けられた。
ダグラス「……〇〇、そんな顔するなよ」
〇〇「……」
ダグラス「ああ……もしかして、とんだマザコン男だって失望してるのか?」
〇〇「そんなわけないです! ダグラスさんと、お母様のことを考えていました……」
彼の胸中を思うと悲しみが込み上げてきて、唇を強く噛みしめた。
ダグラス「〇〇は優しいんだな」
見上げると、ダグラスさんの優しい眼差しが私を見下ろしていた。
ダグラス「もしも……〇〇がここにいる間に、素敵な宝石が見つかったらプレゼントするよ」
私は、彼の眼差しをじっと見つめながら、照れ隠しのように、にっこりと微笑んだ。
その時…-。
女主人「そういえば、一つ面白い情報が出たの」
空いたお皿を下げに来た女主人が、小声でダグラスさんに言葉をかける。
ダグラス「面白い情報……?」
女主人は、ダグラスさんにそっとメモを手渡した。
ダグラスさんはそのメモを確認すると、ニヤリと笑みを浮かべる。
女主人「どう?」
ダグラス「言い値で払うよ」
女主人「ありがと!」
私は何がなんだかわからずに、ただ二人のやり取りを見つめることしかできない。
すると…-。
ダグラス「〇〇、そろそろ船へ戻ろうか」
〇〇「あ……は、はいっ」
(いったい、何が書いてあったんだろう……)
私は、ダグラスさんの広い背中を見つめながら、レストランの出口へと向かうのだった…-。