ダグラスさんと女店主の親しげな様子に、少し肩を落としていると……
私達のテーブルに料理が次々と運ばれてきた。
ダグラス「この辺りの海は水温が低いから、魚の身がぎゅっと引きしまっていてすごく美味しいんだ」
〇〇「そうなんですね、本当にどれもおいしそう……」
ダグラス「遠慮せずに、たくさん食べてくれ」
テーブルに並ぶ魚介類は見るからに新鮮で、どれも身が分厚い。
〇〇「いただきます」
大ぶりの海老を口に運ぶと、弾力のある身が口の中で弾ける。
〇〇「とってもおいしいです!」
ダグラス「よかった。じゃあ、腹いっぱい食べてくれ」
〇〇「はい!」
私の感想を聞いたダグラスさんは、嬉しそうに笑みを浮かべた。
おいしい料理に舌鼓を打っていると、ダグラスさんはくすりと笑いながらワイングラスを揺らした。
ダグラス「元気が出たみたいで、よかった」
〇〇「え…-」
ダグラス「さっき、浮かない顔をしていたから」
〇〇「!」
(恥ずかしい……気づいてたんだ)
見透かされたような気持ちになり、頬が熱を持っていく。
ダグラス「……」
私の気持ちを知ってか知らずか、ダグラスさんは楽しげにワインをひとくち口に含んだ。
ダグラス「実は……。 海賊と名乗ったことで、〇〇が怖がって会いに来てくれないかもと思っていたんだけど」
〇〇「そんなことは……」
(本当は少しだけ、怖い人なのかもと思ってたけど……)
ダグラス「フフッ……〇〇は正直だ。やっぱり怖かったんだろ?」
〇〇「え…-」
私の驚きをよそに、ダグラスさんは声を上げて笑う。
ダグラス「冗談だよ。 俺達は、〇〇が思っているようなことはしない。 主な活動といえば、この辺りの資源を不法に採取する密猟者の排除や、海上と陸上の治安維持。 どう? 怖い人じゃないだろ?」
〇〇「はい……実は、少しだけ怖い人かもしれないと思っていました」
ダグラス「ははっ、やっぱり君は素直だな」
〇〇「すみませんでした……」
ダグラス「謝ることはない」
ダグラスさんはワイングラスを揺らしながら、面白そうに私を見つめていた。
出会って間もないけれど、ダグラスさんと過ごす時間はとても楽しくて…-。
(不思議だな……)
彼のことをもっと知りたいという気持ちが、自然と込み上げてくる。
〇〇「では、海賊というよりは、海上警備をされているんですね」
ダグラス「まあ、それに近いかな」
―――――
ダグラス『もともと商船として商いをしていた俺の先祖が、地上の海賊達を統一……いや、淘汰した。 だから……ちゃんと面倒を見てやらないといけないんだ』
―――――
(あの時の言葉は、このことを言ってたんだ)
長として、広大な海の治安を守るダグラスさんに感心していると…-。
ダグラス「でも、それと同時にトレジャーハンティングもしてる」
不意に、彼のいたずらっぽい瞳が向けられた。
〇〇「トレジャーハンティング?」
ダグラス「そう、宝探し。こっちは逆に海賊っぽいだろ?」
〇〇「宝探し……はい、海賊と言ったらそのイメージがあります!」
ダグラスさんが話す言葉のひとつひとつが新鮮な驚きとなり、私の胸を揺さぶるのだった…-。