第2話 海賊の国

心地よい海風が、頬を撫でる…-。

ダグラスさん腕に手を絡ませながら、私は港街を歩いていた。

腕から伝わるダグラスさんの体温にドキドキしながらも、活気ある街並みに目を奪われる。

ダグラス「ここはいつでも人が多くて賑やかなんだ。人込みは苦手?」

〇〇「いいえ、見ているだけで楽しいです」

ダグラス「そうか、よかった」

私の笑顔を見ると、ダグラスさんも穏やかに微笑んでくれる。

〇〇「ここがダグラスさんの国……なんですね」

ダグラス「そう、ここが俺の国。陸上領地の一つだ」

〇〇「陸上領地?」

ダグラス「この辺りは陸地が少ない。そのかわり海の中にはローレライ、コラリアなどの海底国家があるんだ」

〇〇「海底にも国が……」

想像もつかないような話に、思わず聞き入ってしまう。

ダグラス「こうして陸から眺める海も素晴らしいけど、海の中はもっと美しい」

(国があるってことは、そこに人もいるということだよね?)

(海の中なのに、どうやって息をするんだろう……?)

海の中で暮らす人達を想像していると、さまざまな疑問が頭に浮かんできて、気がつくと、私はしばらく押し黙ってしまっていた。

ダグラス「ははっ!」

〇〇「え……ダグラスさん?」

隣から聞こえてきた大きな笑い声に我に返ると……

ダグラス「〇〇っておもしろいな。すぐ顔に出るから、見ていて飽きない」

ダグラスさんが、おかしそうに笑っている。

ダグラス「〇〇が今何を考えているか当てようか?」

〇〇「えっ、わかるんですか?」

ダグラス「ああ、こんなに表情がころころ変わる女の子は初めてだな」

そう言ってダグラスさんは私を見つめながら頬を緩めた。

ダグラス「海の中なのにどうして息ができるの!? って考えていたんだろ?」

〇〇「は、はい……」

ずばり言い当てられて、素直に首を縦に振る。

するとダグラスさんは穏やかな表情で遠くを見つめながら、海の中の世界について語り始めた。

ダグラス「この海の中には特殊な膜を張った、酸素のあるエリアがある。 陸にいる時と同じように肺呼吸ができるんだ。 もちろん海の中で暮らす人達は水の中でも呼吸することができる。 人魚達のようにね。 運がよければ、海上に顔を出す人魚や海底人なんかを船の上から見ることができることがあるよ」

〇〇「……! 是非、お目にかかりたいです」

ダグラス「ああ、楽しみにしているといい」

見たこともない海の中の国、そこで暮らす人達……

ダグラスさんが話す夢のような世界に胸を躍らせながら、海沿いの街をゆっくりと歩く。

ダグラス「俺の国は……船自体が首都みたいなものだ。海上を動く城塞都市」

〇〇「城塞都市……?」

ダグラス「ああ。昔、海上の世界では狭い陸地を奪い合ってあちこちでひどい紛争が起きていて」

さっきまで穏やか笑っていたダグラスさんの表情が、少しずつ悲しげに曇っていく。

ダグラス「その争いが海底の国々にも影響を及ぼし始めた時――。 もともと商船として商いをしていた俺の先祖が、地上の海賊達を統一……いや、淘汰した」

そこまで言うと、彼は海の遥か彼方を見やる。

ダグラス「だから……ちゃんと面倒を見てやらないといけないんだ」

〇〇「ダグラスさん……?」

問いかけると、彼の優しい眼差しが私に注がれた。

ダグラス「来ればわかるよ」

海鳥達の楽しそうな鳴き声を聞きながら、私達はまた歩き出したのだった…-。

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