海賊の国・アンキュラ 輝の月…-。
遥か彼方まで続く、美しく澄んだコバルトブルーの海…-。
世界で一番美しい海があるこの地で、眠りから目覚めた王子が、今私に微笑みかけている。
ダグラス「助けてくれてありがとう。俺はダグラス。君は……?」
差し出された手は、私の手をすべて包み込むほどに大きい。
〇〇「……〇〇です」
ダグラス「〇〇……美しい名前だ。よろしく」
がっしりとした体を見上げると、海風にのって、ふわりと銀色に輝く髪が揺れる。
ダグラス「〇〇、君は命の恩人だ。心から礼を言うよ」
〇〇「いえ、そんな……」
ダグラス「いや、言葉だけじゃ俺の気がすまない。そうだ! 俺達の国……船に遊びにこいよ」
〇〇「国……船が、ですか?」
私の表情を見て、ダグラスさんが自慢げに笑みを浮かべる。
ダグラス「そう、なんたって俺は、海賊だからね」
(海賊……?王子様が?)
疑問を抱きつつも、こうして私はダグラスさんの船に招待されたのだった…―。
…
……
指定された港へやってくると、どこまでも続く青い海が私の目に飛び込んでくる。
(綺麗……)
岸壁まで行って下を覗くと、海の底にあるサンゴ礁に熱帯魚が群がっているのが見える。
(あ、クマノミ! かわいいな)
息を呑むほど綺麗な海と、小さな熱帯魚に心を弾まさせていると、聞き覚えのある声が耳に届く。
ダグラス「待たせたな」
〇〇「ダグラスさん!」
ダグラス「よく来てくれた。出航前にこの港街で資材や食料を買いつけるから、ちょっと街を歩こう?」
とても自然にウインクをするダグラスさんを見ると、頬がほんのりと染まってしまう。
〇〇「は、はい」
しどろもどろに返事をすると、私の手が力強く取られて……
(え! 手……!)
〇〇「あの……!」
ダグラス「ん? どうした?」
〇〇「い、いえ……!」
ダグラス「街で一番おいしいシーフードレストランに〇〇を案内しよう」
満面の笑みを浮かべるダグラスさんの隣で、私は高鳴る胸にそっと手をあてるのだった…-。