第3話 チョコレートの花束

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楓「愛の日は、明後日。 贈り物を通して、大切な人に愛を伝える日だよ」

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愛の日に向け賑わうショコルーテの街を、楓さんと歩き続ける。

楓「ああ。あの飾りの色使いはいいね……朽ち葉のような色なのに、白と混ざって暖かさがある」

楓さんの言葉の一つ一つを聞いていると、街がより一層彩られて見える気がした。

楓「ねえ、見てごらん、これ」

○○「何ですか……?」

楓さんが、含み笑いと共に指差したものは……

ぽっちゃりと丸い、何かのキャラクターグッズだった。

楓「まるっこくて、君みたいだよね」

○○「っ!ひどいです……楓さん」

楓「そうかな?可愛いって言ったつもりだったんだけど」

クスクスと笑いながら、楓さんはその場を通り過ぎる。

(確かに可愛くないわけじゃないけど……)

楓「ほら、先へ進むよ」

その場に立ち止ってしまった私に、楓さんが声をかけてくれる。

慌てて隣に並ぶと、人混みから庇うように、私の肩に楓さんの手が回された。

(たくさん意地悪言ってくれるけど……こうして私のこと見ててくれる)

胸の中に灯る不思議な温もり感じながら、楓さんと歩き続けた…―。

……

それからしばらくして…―。

○○「楓さん、どうですか?インスピレーション湧きましたか?」

楓「うーん……もう少し君の意見を聞けたら、何か掴めるかもね」

○○「もう少し……」

(私の意見……)

何かヒントになるものはないかと、辺りを見回してみると……

(あ……)

可愛らしい文字で、『チョコレートアートの展示』と書かれた看板が目に入る。

○○「楓さん。あそこに行ってみませんか?」

楓「チョコレート……アート?」

楓さんはしばらく看板を見つめた後、ふっと私に笑いかけた。

楓「君らしい発想だ……面白そうだね」

そうして楓さんと私は、展示場へと向かうことになった。

会場に入ると……

○○「わあ……素敵」

会場内には、様々なチョコレートが飾られており、その中でもひときわ目についたのは……

○○「チョコレートの花束……!」

一枚一枚、チョコレートで丁寧に作られらた花びらが繋ぎ合わされている。

楓「へえ……食べ物で繊細な花びらを一枚一枚表現するなんて……。 芸術を表現する方法は、たくさんあるもんだね」

楓さんは、何か感銘を受けた様子で、じっとその花束に見入っている。

○○「何を思って……これを作ったのかな」

ふと、こぼれ落ちた独り言に、楓さんが私に綺麗な視線を流す。

楓「……愛しい人かもしれないね」

○○「っ……!」

その答えに、とくんと鼓動の音が胸の中で響いた。

すると、私達の話を聞いていたのか、展示スタッフの方が私達のところへ来てくれた。

展示スタッフ「こちらは、一枚一枚の花びらに、作り手の思いがしっかりと込められたチョコレートです」

楓「やっぱり、一つ一つ手作りか……」

楓さんが納得したように深く頷く。

○○「素敵ですね。本当に思いがひしひしと伝わってくる気がします。 それに、花束のラッピングもとても丁寧にされていて……。 チョコレートだから茶色いのに、とても華やかで温かな雰囲気になっていますよね」

綺麗で温かなチョコに贈り物に、心が弾んでしまうと…―。

楓「うん、やっぱり君の感性は悪くないね」

○○「あ…―」

いつになく優しい楓さんの声に、私は……

○○「……ありがとうございます」

恥ずかしさを感じつつ、小さな声でお礼を言う。

楓「ふふっ、素直で可愛いね」

その言葉と同時に、私の手にするりと楓さんの指が絡められる。

心がいっそう熱を帯びることを感じながら、チョコレートの花束をただ見つめていた…―。

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