第5話 花と蝶

カーライルさんにエスコートされ、煌びやかな会場を歩く。

カーライル「この先に、きっとあなたが絵や美術品よりも気に入るものがありますよ」

(何だろう……)

恥ずかしさと緊張で、言葉はどこかへ行ってしまったようだった。

彼に導かれるままに黙ってついていくと、花畑のような場所に出た。

○○「わあ……!」

一面に花が咲き乱れ、夜露を湛え光っている。

いい香りに惹き付けられたたくさんの蝶達が、ヒラヒラと舞っていた。

○○「綺麗……」

カーライル「ようやく笑顔を見せてくれましたね」

見上げると、カーライルさんが私を見つめ、目を細めている。

カーライル「どんな芸術も自然にはかないません。 それに花はいい……キラキラと屈託なく輝いて、空に向かってまっすぐに伸びていく」

○○「本当に……キラキラしてて綺麗ですね」

私は、花と蝶に目を奪われ、ほとんど上の空で返事をする。

カーライル「……まるで、あなたみたいだ」

カーライルさんがくすりと笑う声が聞こえ、私は首を傾げた。

○○「え?」

カーライル「……夢中のところ申し訳ないのですが、私のことも構っていただけますか。 何しろ、あなたの耳としっぽの行方がかかっているもので」

○○「あ……!すみません」

楽しそうに笑うカーライルさんに見つめられ、頬が染まっていく。

そっと彼の腕に手を添えると、カーライルさんがくすくすと笑った。

カーライル「花と蝶に夢中になって、まるで本当の猫みたいだ」

○○「……っ」

カーライル「喜んでいただけて、よかった。 ただ、手を離さずにはしゃいでいただけると、私としてはもっと嬉しいのですが」

○○「は、はい」

恥ずかしさにまつ毛を伏せると、彼は花を一輪手折って私の髪に飾ってくれる。

○○「……?」

蝶が私の髪に飾られた花に留まり、カーライルさんはそっと目を細めた。

(カーライルさん……)

ーーーーーー

カーライル「綺麗なものを生み出したいのに、人の心の穢れを見すぎて、もう作品を作りたくなくなってしまった」

ーーーーー

時間がゆっくりと過ぎていく。

蝶を追う彼の瞳を見つめ、そっと頬に手を伸ばした…ー。

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