フリューさんと静かな中庭でゆっくり語り合っていると……
フリュー「あの……えっと……」
〇〇「何ですか?」
フリュー「この国……アフロスには運命の人を映す水鏡があると聞いたんだ」
〇〇「運命の人……ですか? なんだか神秘的ですね」
興味深い話に耳を傾けていると、フリューさんの表情がどこか悲しげなことに気づく。
フリュー「古くから伝わる、信頼性の高いもので、はっきりと映るそうなんだ……運命の人の姿が……。 水鏡に映った相手と結婚した人は……誰もが生涯幸せに過ごすと……言われてて」
夢のような話に、私は黙って聞き入ってしまう。
フリュー「だけど……もしもきみに、運命の人が見つかってしまったらと思うと、僕は……」
(私の運命の人……)
その言葉を聞くと、なんだか不思議な気持ちになる。
フリュー「毎年……そこにはたくさんの方が集まり、盛況だと兄から……聞いているんだ」
〇〇「確かに、運命の人がわかると聞けば、気になりますよね」
フリュー「やっぱり……きみも気になる……?」
不意にフリューさんから質問をされ、私は答えた。
〇〇「運命の人がわかるなら、見てみたいなって思います」
フリュー「……」
〇〇「フリューさん?」
フリューさんは何も言わず、うつむいている。
フリューさんの表情が曇ってしまい、私は不安になって尋ねた。
〇〇「フリューさん、どうしたんですか?」
フリュー「僕は……怖いんだ」
〇〇「怖い?」
フリュー「僕は信じているんだ……その水鏡に映る……僕の……」
〇〇「え?」
だんだんと小さくなるフリューさんの声に耳を澄ますけれど、聞き取ることができなかった。
フリュー「いいえ、なんでもありません……」
(フリューさん……)
フリューさんが言いかけた言葉が気になったけれど、私は、なぜだかそれ以上聞くことはできなかった…-。