第3話 大好きな笑顔

透き通った空を、私とミヤを乗せた飛行船が悠々と進んでいく。

ミヤ「風が気持ちいいね!」

〇〇「うん!」

ミヤ「わっ! あそこの島でパレードしてる! 見てみて!」

〇〇「ミ、ミヤ。落っこちたりしないでね?」

ミヤ「平気だって! 今度、空飛ぶ魔術でも研究してみようかなあ~。 そしたら、キミのこと乗せて飛んであげるからね」

彼の明るさが、私の心を優しく照らしてくれる。

(ミヤと過ごせて、嬉しいな)

そして、しばらく空の旅を楽しんだ後……

文豪の国のパビリオンにたどり着いた私達は、弾む気持ちで、グレアム君が監修している脱出ゲームのアトラクションへと向かったのだった…-。

……

暗い部屋の中に案内されると、係員の人に脱出のヒントが書かれた紙を渡される。

〇〇「これって……?」

その紙には、模様のようなものがたくさん描かれている。

(何が描かれているのか、全くわからない……)

その時、金色の柔らかな髪がふわりと頬に触れた。

ミヤ「ちょっと見せて」

私が持っている紙を、ミヤが覗き込む。

ミヤ「さすがグレアム! 一筋縄ではいかない感じがするね」

(ち、近い……!)

息のかかる距離に彼を感じ、頬にじわりと熱が集まっていく。

ミヤ「でも、大丈夫だよ。謎は解けそうだ」

〇〇「えっ……ミヤ、これがわかるの!?」

思いがけない言葉に驚いて声を上げると、彼がその反応を楽しむように笑った。

(うーん……駄目だ、やっぱりわからない)

まじまじと紙を見つめていると、ミヤが少し悪戯っぽい声を上げる。

ミヤ「そんなに見たら、紙に穴が開いちゃうかも」

持っていた紙を手渡すと、ミヤはそれを丁寧に折り合わせていく。

ミヤ「グレアムが作った謎なら、たぶん最後に全部のピースがはまるようにできてるはず。 なら、こういう意味のわからない模様も……ほら」

そう言いながら、ミヤは私に紙を見せる。

すると、紙に描かれていた模様が組み合わさり、一つの絵柄が出来上がって……

〇〇「本当だ……」

ミヤ「この絵柄が描かれている場所を探してみよう」

〇〇「うん! これなら脱出できそうだね」

得られたヒントを手がかりに、夢中になって絵柄を探していると、不意に視線を感じる。

ゆっくりと振り返ると、ミヤが優しい笑みを浮かべて私を見つめていた。

〇〇「ミヤ?」

ミヤ「あ……ううん。なんでもない、行こう」

次の瞬間、手のひらがふわりと温もりに包まれる。

ミヤ「暗いから、ね?」

その手を握り返すと、彼の温もりがさらに伝わってきて……

〇〇「……うん」

私達は手を繋ぎ合い、脱出を目指して歩くのだった…-。

……

けれど、もう少しのところで脱出ゲームは失敗に終わってしまった。

(いいところまで行けたんだけどな)

私が残念に思っていると、ふとミヤが申し訳なさそうにまつ毛を伏せる。

ミヤ「……ごめんね」

〇〇「どうしてミヤが謝るの?」

首を傾げる私に、ミヤははにかむように笑って……

ミヤ「早く解こうと思えば解けたと思う。けど、〇〇ちゃんと一緒にいる時間が楽しくて。 オレを頼ってくれたり、すごく一生懸命なキミを見てたら、なんか……」

言葉を詰まらせると、ミヤがまっすぐに私を見つめる。

ミヤ「もっと、キミとこうしていたいなって思って」

(そんなこと、思ってくれていたなんて)

(私もミヤと一緒にいて、すごく楽しかった)

ミヤ「あっ! もちろん、本当に脱出しなきゃいけないことが起きたら話は別だよ! その時は、オレが絶対にキミを守るから」

ミヤは、力強く拳を握りしめる。

(ミヤ……)

〇〇「ミヤの気持ち、すごく嬉しい」

ミヤ「はは……キミにそんな顔されると、オレの方が嬉しいよ」

彼の想いが嬉しくて、自然と笑みがこぼれる。

(ミヤのこういうところ……すごく好きだな)

顔を上げると、彼が慈しみに満ちた眼差しを私に向けていた。

〇〇「ミヤ……?」

ミヤ「やっと笑ってくれた」

〇〇「えっ?」

ミヤは私の顔をまじまじと見ると、幾度か小さく頷いた。

ミヤ「うん。やっぱりオレ、キミの笑顔が好きだ」

彼に微笑みかけられ、柔らかな毛布にふわりと包まれたような、優しい気持ちになる。

(私も……ミヤの笑顔が大好き)

甘く騒ぐ心をどうすることもできず、私は胸の上に手のひらをそっとあてた…-。

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