澄んだ空を、たくさんの船が行き交っている…-。
夢の力が強まったことを祝福し、世界各国が集まる『ワールドサロン』が、盛大に執り行われていた。
(……緊張してきちゃった)
私は明日、ここで行われるセレモニーでトロイメアの姫としてスピーチをすることになっていた。
世界各国の王族が勢揃いする、とても厳かな場……
(そう考えると……どうしてもドキドキしてしまう)
胸のざわめきを抑えられず、もうずっとそわそわしてしまっている。
(今からこんなんじゃ、駄目だよね)
心を落ち着かせようと、胸に手をあてて小さく呼吸を繰り返していると…-。
??「〇〇ちゃん」
扉の向こうから、人懐っこそうな声が聞こえてくる。
(この声は……)
〇〇「もしかして、ミヤ?」
私の声に応じるように、ミヤが扉から顔を覗かせた。
ミヤ「キミがここにいるって聞いて、会いに来ちゃった」
明るい声と優しい笑顔に、張り詰めていた気持ちが緩んでいく。
〇〇「嬉しい、ありがとう」
(ミヤの顔を見ると、なんだかほっとする)
ミヤ「どうかした?」
〇〇「えっ?」
ミヤが傍まで来て、心配そうに私の顔を覗き込む。
ミヤ「いつもより、元気ないかなって」
気遣わしげな眼差しに、心の中を見透かされたようで…-。
(ミヤにはなんでも見抜かれちゃうみたい)
〇〇「明日のスピーチのことを考えてたんだ。でも大丈夫」
心配をかけてはいけないと、私は口角を上げ笑顔を作った。
ミヤ「……」
すると…-。
ミヤ「あのさ、今日って何か予定ある?」
〇〇「え? 特にないけど……」
ミヤ「じゃあ、決まりだ」
目を細め柔らかな笑みを浮かべると、ミヤが私にすっと手を差し出す。
ミヤ「今日一日、あなたをエスコートさせていただけませんか?」
優雅に一礼され、ドキリと胸が高鳴る。
(ミヤが、私を……?)
恭しいミヤの振る舞いに、私は思わず見とれてしまっていたのだった…-。