第5話 離れがたい気持ち

アヴィに手を引かれ、私達は城の外へとやってきた。

心地よい風が、熱くなった体をゆっくりと冷ましていく。

アヴィ「思ったより、上手かったな」

〇〇「足を踏まなくてごめんね」

冗談で返すと、アヴィが笑い声を漏らした。

アヴィ「踏まれたら、笑ってやろうと思ってたのに」

〇〇「でも、すごくドキドキした……」

(ダンスしている間中、アヴィをいつもより近くに感じて)

(それに、アヴィがなんだかいつもと違って見えて……)

〇〇「アヴィって……王子様なんだなって、改めて思った」

心の内をこぼすようにそう言うと、アヴィはどこか気恥ずかしそうに頭を掻く。

アヴィ「それはこっちの台詞だ」

〇〇「え……?」

アヴィ「なんていうか……お前って…-」

言いかけて何かに気づいたのか、アヴィは言葉を止めた。

貴族1「姫、是非一曲お願いします」

身なりのいい男性が、にこやかな笑みを浮かべながら私に歩み寄ってきた。

〇〇「あ……」

貴族2「トロイメアの姫君、どうか私とも…-」

その間にも、私達を取り巻く人達が増えていく。

アヴィ「……」

(応えないと……)

わかっていても、アヴィと離れると思うと手を取ることができない。

逡巡してしまっていると……ふと、私の前に影が落ちた。

アヴィ「姫のお相手は本日、私が務めることになっております」

私を背にかばい、アヴィは毅然と言い放った。

(アヴィ……)

貴族1「あなたは、アルストリアの……! そうでしたか、これは失礼を」

男性はアヴィを見ると、一礼して私達から離れていく。

辺りにいた人達も同じように立ち去っていった。

アヴィ「……人気者だな」

〇〇「もう……からかわないで。でも、ありがとう。 本当は、こうしてアヴィといたかったから」

思い切って伝えると、言葉が溢れて…-。

〇〇「アヴィといると落ち着くから」

アヴィ「……落ち着く、か」

彼はどこか困ったように目を細め、小さく笑った。

アヴィ「それだけか?」

〇〇「え?」

アヴィの言葉の意味を掴めずに、私は彼の顔を見つめた。

青紫色の瞳が月明かりをにじませ、切なげに揺れている。

〇〇「……どういうこと?」

聞き返す私に、アヴィはまた困ったような笑みを浮かべる。

(アヴィ……?)

アヴィの真意がわからない…-。

そのことに胸を苦しくさせていると、アヴィが何かを覚悟したように、私へと距離を詰めた。

アヴィ「なあ……俺は、お前にとってどんな存在なんだ?」

(え……?)

吹き抜ける風が、アヴィの髪を艶やかに揺らす。

乱れた髪の向こうから、熱を帯びた瞳がまっすぐに私を見つめていた…-。

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