第2話 花畑に彩られて

機械音が響き、飛行船がゆっくりと降下していく…-。

船が島へと降り立つと、色とりどりの花びらが舞い上がった。

アヴィ「すごいな。ずっと向こうまで、花でいっぱいだ」

〇〇「本当だね」

タラップへと足を踏み出せば、一面の花畑が私達を出迎えてくれているようで胸が弾む。

アヴィ「気をつけろよ、そこ段差あるから。 ほら」

アヴィは先に地面に降りて、私に手を差し出してくれる。

ごく自然にそうしてくれることを嬉しく感じながら、私は彼の大きな手を取った。

(アヴィらしいな)

無骨な指先が私の手を掴まえ、そっと引き寄せた。

〇〇「ありがとう」

アヴィ「別に、礼を言うようなことじゃねえだろ?」

アヴィに手を引かれ、胸の高鳴りを感じながら花畑の中を歩く。

美しく咲き誇る花々が、爽やかな風を受けて幸せそうに揺れていた。

アヴィ「……綺麗だな」

〇〇「うん……」

隣にたたずむアヴィをそっと見上げると……

彼は優しい眼差しで花々を見つめていた。

アヴィ「フラフをここに連れてきてやりたかったな。きっとすげえ喜ぶ」

〇〇「うん……そうだね。 今度、絶対に連れてきてあげようね」

アヴィ「ああ。楽しみだな」

アヴィは口に端を嬉しそうに引き上げ、私へと顔を向ける。

アヴィ「夢の力が強まってる場所……か。お前の力って、すげえな」

彼の瞳が私を捉え、鼓動がひときわ大きな音を立てた。

〇〇「私は何も…-」

アヴィ「何もしてない、なんて言うなよ?」

私にかぶせるように、アヴィが少し口早に言葉を紡ぐ。

アヴィ「そんな奴を守ってきた覚えはねえからさ」

〇〇「アヴィ……」

その時……不意に吹き抜けた風が、青紫色の花びらを巻き上げた。

(これ……)

辺りの花畑を見渡すと、同じ色の花々が咲き誇っている。

アヴィ「似てるな。あの花に……」

アヴィがゆっくりと花に近づき、そっと一輪を手折る。

その花を私の髪に飾り、愛おしげに目を細めた。

アヴィ「お前に、よく似合ってる」

視界の片隅で青紫の花びらが揺れる。

その色は、私を見つめる瞳の色ととてもよく似ていて…-。

アヴィ「……母上が死んでからは、悲しい色に見えてた。 けど、お前と出会って……また綺麗だって思えるようになったんだ」

優しさを湛えた眼差しに、胸が切なく締めつけられる。

アヴィ「やっぱ、お前ってすげえよ」

〇〇「違うよ。私は……アヴィや皆に支えられて、ここまでやってこられたんだから」

アヴィ「……」

アヴィは何か言いたげに眉尻を下げると、少し呆れたように微笑んだ。

アヴィ「ったく……。 ……まあ、そういうのがお前のいいところでもあるか」

アヴィの手がふわりと私の頭を撫でる。

(この手にいつも、支えられてきた)

彼の手のひらの感覚に、いつしか深い安らぎを覚えるようになっていた。

花畑のあちこちで、人々が幸せそうに笑っている。

その笑い声に、私達はしばらく耳を澄ましていた。

〇〇「なんだか……嬉しいね。 夢の力が強まって、皆がああやって笑ってて……」

アヴィ「お前は皆の笑顔が好きだからな」

〇〇「うん……だから、守っていきたい」

アヴィは何も言わず、私の気持ちを受け止めるように目を閉じる。

(アヴィのことも……)

守られるばかりではなく、守っていきたい……

彼との今までの時間が、私に強くそう思わせた…-。

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