カップルは金の砂を前に、薄ら笑いを浮かべてそれを受け取る。
そして逃げるようにそそくさとその場を後にした。
アザリー「やれやれ……」
カップルの背を見送りながら、アザリーさんが大きくため息を吐いた。
アザリー「……〇〇。やっぱりティアラに相応しいのは君だよ」
〇〇「えっ?」
アザリー「あのバカップルに何か言い返そうとしただろう? 君は心も綺麗だ。やっぱり僕は見る目があるな」
アザリーさんはそう言った後、屈託なく笑う。
すると……
男2「あ、あの、本当にありがとうございました」
突き飛ばされたカップルが、アザリーさんに向けて頭を下げる。
アザリー「礼には及ばない。当然のことをしたまでだ」
男2「どれだけ嬉しかったか。何かお礼をさせてください」
アザリー「む、そうか? ならば……おお、そうだ! いつか僕と〇〇を、君達のパン屋に招待してもらおうか」
アザリーさんは私の肩に手を置きながら、カップル達に期待の眼差しを向ける。
女2「え?それはもちろん構いませんが……」
アザリー「おお、そうか! では楽しみにしているぞ」
そう言ってアザリーさんは満面の笑みを浮かべる。
そして……
アザリー「ああ、腹が減った。何か食べなきゃ空腹で倒れそうだ。 〇〇、戻って再び食事にするぞ」
〇〇「えっ?ま、またですか?」
アザリー「そうだ。食い物の話をしていたら腹が減った。 というわけで、僕達はここで失礼する」
男2「えっ?あ……はい。本当にありがとうございます!」
再び深く頭を下げるカップルに、アザリーさんは屈託のない笑顔を向ける。
どこまでも大らかな彼の姿に、私の胸は小さく高鳴ったのだった…-。