第2話 波乱の予感

羊達が、パーティ会場の周りで土ぼこりを上げている…-。

その光景に気を取られたせいで、私はいつの間にか羊の群れに巻き込まれてしまっていた。

(ど、どうしよう……!)

どうにかその場に留まろうとしたものの、勢いに圧されてしまう。

するとその時、誰かに強く手を引かれ、抱き上げられた。

アザリー「娘! 危ないところだったな」

先ほどの男性……アザリー王子が、私の腕に抱いて笑っている。

〇〇「す、すみません」

アザリー「いや、気にするな。男として当然のことをしたまでだ」

私を抱いたまま、アザリーさんは赤い絨毯を踏んで会場の中へと入っていった。

カリム「アザリー王子。そもそも、しちらの女性を巻き込んでしまったのは、王子の愛する羊です」

後ろからついて来ているカリムさんが、こっそり耳打ちをする。

アザリー「む、そうだったか。では羊が君を僕のもとへと運んでくれたんだな」

アザリーさんは屈託なく声を上げて笑い、私を絨毯の上にふわりと降ろした。

アザリー「娘、名はなんと言う」

〇〇「あ、えっと……〇〇、です」

アザリー「〇〇。よい名だな。羊の縁で、今日の僕のパートナーを務めることを許す」

光栄だろう、と語尾につかなかったのが不思議なくらいに、アザリーさんはあっさりとそう決めつけた。

〇〇「あ、の……。 パートナーって……?」

アザリー「そうだ。僕に選ばれたんだよ、〇〇は!」

(そ、それは答えになってないような……)

どうして良いかわからずに、私は曖昧に笑った。

アザリー「む? 不思議そうな顔をしているが……ああ、そうか! うっかりしていた。僕としたことが、まだ名乗っていなかったな。 僕はアザリー。出自は……ふむ、それは少々無粋か」

(王子様って、さっき聞いちゃったけど……)

アザリー「まあよい。細かいことを気にしても仕方がないからな。 僕は金砂の国・サリューシャの正統なる王位継承者だ」

(あ、あれ?結局名乗ってる……?)

どこかおかしな展開に、瞬きすら忘れてしまう。

カリム「アザリー様、お席の準備ができました」

アザリー「そうか! 〇〇、あれを見ろ」

うろたえる私を気にすることなく、アザリーさんは会場の真ん中辺りを指し示した。

〇〇「これは……」

砂漠にあるような天幕に、ふわふわのクッション、それになぜか、さきほどの羊達……

周りの人々がそれを見てざわめいていた。

(も、ものすごく注目されている……。 当たり前と言えば当たり前なんだけど……)

アザリー「急ごしらえだが、まあいいだろう。VIP席ってところだな」

アザリーさんは満足げに笑う。

(な、何だか、すごいパーティになりそうな気がする……)

周囲のことなどおかまいなしに……

彼の瞳は楽しそうに輝いていた…-。

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