夜空に星々が瞬き始める頃…-。
私は、とあるパーティに招かれていた。
(すごく素敵な会場……)
美しい建物に、華やかな衣装を身につけた人々が次々と入っていく。
どの人も、招待状に添えられていた蝶の飾りを身体のどこかにつけていた。
(こうして見ると、まるで蝶々がたくさん飛んでるみたい……)
私は自分の手首に結んだ蝶の飾りを見つめ、招待状が送られてきた時のことを思い出した。
『特別な蝶のティアラを作りました。』
『私の蝶は、会場一番の花にとまるでしょう……。』
代々夢王のクラウンを作っているコロナ国の王子様から送られてきた招待状には、そう書かれていた。
貴婦人1「トロイメア王家の方々以外にティアが贈られるなんて、初めてじゃないかしら……」
貴族1「コロナ王家の方々が作られるティアラやクラウンは、持ち主に栄光をもたらすと言われていますからね」
貴婦人2「こんなにおめかししたんですもの、きっと、わたくしにもチャンスが……」
周囲からは、様々なささやき声が聞こえてくる。
(きっと、すごく綺麗なティアラなんだろうな)
期待に胸を膨らませ、入場しようとした時…-。
衛兵「お客様、招待状についていた蝶の飾りをつけてない方にはご入場いただけません」
衛兵さんに、一人の男性が入場を止められた。
??「招待状? そんなもの、僕には必要ない。この僕を拒むパーティなんて、あるはずないからな」
楽しそうに笑いながら、男性はなおも悠然と歩みを進める。
すると、衛兵さんが慌てたように男性の腕を掴んだ。
??「あ…-」
腕を掴まれた男性が、不意に後ろを振り返ると…-。
(……? 何の音……?)
どこからともなく響き始める音に辺りを見回すと、白い塊が猛スピードで近づいて来ていた。
〇〇「え……!羊……!?」
羊の大群は、鳴き声と共に私の傍を駆け抜けていく。
??「お前達! 僕を追ってきてはいけないとあれほど……まったく仕方ないなあ」
男性は羊達に向かって、嬉しそうな笑みを浮かべた。
??「アザリー王子、こちらに」
お付きの人と思われる男性がどこからともなく現れ、赤い絨毯を転がす。
(今、アザリー王子って呼ばれてたけど……この人、王子様なんだ)
アザリー「カリム。そう大袈裟にするな。せっかくのパーティなのに、身分がばれてしまうだろ」
文句を言いながらも、アザリー王子は絨毯の上を悠然と歩いていった。
(なんだか、びっくりしちゃった……)
羊のメーメーと言う声と、草を食む音が辺りに響いている。
増え続ける羊の群れを、衛兵さんが必死に追っていた…-。