騎士の国・アルストリア、陽の月…―。
アヴィを助けたお礼にと、私は改めてアルストリアの城へ招待されていた。
柔らかな陽射しの中、執事さんの後ろを、アヴィと並んで歩く。
豪奢な城内には、品の良い調度品とドライフラワーが廊下に飾られていた。
〇〇「あ、このお花」
ふと窓から中庭を覗くと、ドライフラワーと同じ淡い青紫色をした花がたくさん咲いていた。
執事「庭に咲いている品種なのですよ。美しいでしょう?」
〇〇「はい。とてもきれいな色ですね。ドライフラワー以外にも、そのまま生けても、きっと素敵」
優しく声をかけられて、温かい気持ちになりながら答えていると……
アヴィ「何だよ、にやにやして」
アヴィが腰に手を当て、怪訝な顔をしながら、私を見下ろしている。
〇〇「このお花、ドライフラワーもいいけど、そのまま飾ってもきれいなんじゃないかな」
弾んだ声で、アヴィにそう声をかけると……
アヴィ「……そんなの、すぐ枯れて終わりだろ」
〇〇「え?」
一瞬、聞き違いかと思った。
いつも真っ直ぐで、力強いアヴィのひどく寂しそうな声。
〇〇「アヴィ?」
その声が気になって、彼の顔を覗き込むと…―。
アヴィ「おい、早く行くぞ。父上を待たせてるんだ」
ハッとした顔をして、次の瞬間にはもういつもの彼の声色に戻っていた。
〇〇「う、うんっ!」
慌てて彼の大きな背中の後を追うけれど……
(すぐに、枯れてしまう)
アヴィの言葉が、私の耳に張りついて離れなかった…―。