波の音が遠くでさざめいている…-。
彼の指が私の頬を撫で、そっと耳の後ろに回された。
〇〇「……っ」
その時……
〇〇「え!?」
灰色の空から、突然激しい雨が降りつける。
アピス「……ひどいな」
そう言って、アピスさんは、持っていた私の傘を広げた。
激しい雨が傘を叩き、傘をさしていても、水しぶきが服を濡らしていく。
〇〇「車まで走りましょう」
アピス「これだけ振ってたら、走ったって同じだよ」
そう言って、彼は私の肩を引き寄せた。
(ち、ちかい……! でも、濡れちゃうし……)
アピス「そこに岩場があるから、雨宿りしよう」
胸の音が煩くて、頷くことができない。
雨宿りまでの道のりは、雲の上を歩いているような心地がした…-。