第4話 記念写真

庭園までに続く坂道から、すでに紫陽花が見えていた。

赤、青、紫――どの色の紫陽花も、とても豊かに咲いている。

○○「綺麗だね……」

フォーマ「紫陽花の色は、土のPH値によって違うんだよ」

○○「えっ、そうなの?」

フォーマ「酸性なら青色、アルカリ性なら赤色に変わる。そういう特徴を持っているんだ」

○○「フォーマって物知りだね」

フォーマ「そうかな?」

フォーマは嬉しそうに顔をほころばせた。

フォーマ「庭園にはもっと沢山咲いているよ。行こう」

私達は坂道を上り、庭園へと向かった。

満開の季節ということもあり、庭園には大勢の人達が紫陽花の鑑賞に来ていた。

○○「フォーマ、大丈夫?」

私は、フォーマの顔を覗き込んだ。

フォーマ「大丈夫だよ。綺麗な物を見ている時は、人は悪い感情を抱かないから」

今日のフォーマの顔色は、とても良さそうだった。

○○「それに……」

私は思わず声を潜める。

○○「皆さん、フォーマのことに気付かないで良かったな……って思って」

フォーマ「たぶん、こんなところに王子がいるなんて思わないんだよ」

(そうか……よかった)

私達は、安心して紫陽花鑑賞を楽しんだ。

……

庭園の中へ進んでいくと、石段伝いに紫陽花が咲き誇っていた。

(すごい……!)

そこでは、大勢の人達が記念撮影をしている。

(カメラ……いいなぁ)

フォーマ「写真撮りたいの?」

私の気持ちに気付いたのか、フォーマは鞄の中から、小さなカメラを取り出した。

フォーマ「持ってきて良かった。撮るよ」

○○「えっ……!?」

(どうしよう。一緒に撮りたいけど……)

(でも、さすがに誰かに頼んだら、フォーマが王子様だってばれちゃうよね)

フォーマ「○○?」

○○「えっと……」

(どうしたら一緒に撮れるかな?)

私は言葉を探すが、なかなか見つからない。

フォーマ「?」

(少し恥ずかしいけど……ストレートに伝えた方が良いよね)

○○「あのね、フォーマ。 私、フォーマと一緒に撮りたいな……」

フォーマ「僕と?」

○○「駄目かな?」

フォーマ「だ、駄目な訳がない!」

フォーマは顔を赤くしながら、否定をした。

(良かった)

フォーマ「そうだな……まずはもう少し近寄ろうか?」

私達は紫陽花の前に立ち、ぎこちなくその距離を縮めた。

フォーマが片手で持つカメラのレンズに入るように、二人の顔を近づける。

フォーマ「……と、撮るよ」

二人で撮った写真は、きっとぎこちない笑みを浮かべているに違いなかった。

(でも……一緒に撮れて嬉しい)

(早く出来上がりが見たいな)

初めての記念写真は、私の宝物になる……私はそう、確信した。

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