海辺に到着し、アピスさんが車のドアを開けてくれる。
〇〇「わあ……」
海風がスカートを揺らし、波の音が耳に響く。
降りようとすると、アピスさんが手を差し伸べてくれた。
〇〇「……ありがとうございます」
恥ずかしかったけれど、素直にその手を取って砂を踏む。
アピス「よかった。まだ大丈夫そうだね」
空を見上げ、アピスさんが安心したようにつぶやいた。
〇〇「あ、私、カバン置いたまま……」
カバンを取ろうと振り返ると、運転席の下に一枚の紙が落ちているのが見える。
(何だろう?)
拾おうとした手が止まった。
(“デートプラン”……)
きっと彼自身の手で書かれたその6文字に、胸がきゅっと締め付けられる。
(調べてくれてたんだ)
アピス「何してるの? 早くしないと置いてくけど」
〇〇「は、はいっ」
急いでカバンを取って振り返ったけれど、頬に笑みが浮かぶのを止めることができなかった。
アピス「どうかした?」
〇〇「いえ。海、久しぶりだから嬉しくって」
(デート……だし)
〇〇「私、泳ぐの得意なんですよ」
アピス「そう? じゃあ、泳いでみる?」
彼は、私の背を押して海に落とそうとする。
〇〇「えっ!」
慌てて彼の腕にすがると、
アピス「……冗談に決まってる」
そう言って、彼は私の腰元を抱き寄せてくれた。
〇〇「す、すみません。 あ、あの、あっちの方に行ってみませんか?」
頭が真っ白になって、私は思いつくまま、まくしたてる。
彼に背を向けて歩き出し、何度も浅い息を吸った。
〇〇「あそこの雲、なんだか人魚みたい。あ、人魚の伝説って、こっちの世界にもあるんです…-」
すると…-。
いつの間にか隣に立った彼が、私の髪にキスを落とす。
〇〇「……っ」
海風が髪を巻き上げる。
彼の指が私の頬に触れた…-。