第6話 夜光の花

いつの間にか太陽は落ち、儚い月明かりが部屋に差し込んできていた。

〇〇「……アキトさん、教えてください。 夜光の花、というのは何なんですか?」

アキト「っ……!」

そう問うと、アキトさんは驚いたように顔を上げた。

アキト「……」

戸惑っているのか、彼の黒い瞳が微かに揺れている…-。

(やっぱり、聞いちゃいけないことなのかな……)

〇〇「……ごめんなさい。 実は街で、アキトさんのことをそう言った人がいて……」

アキト「そう……」

アキトさんの形のいい唇から、諦めたようなため息がこぼれ落ちる。

アキト「聞かれたのなら、仕方がないですね」

私の手首を掴む力が、ふっと緩められた後…-。

アキト「夜光の花というのは、私のように毒を持つ花の種族で組織されている特殊部隊のことです」

低く静かな声色で、アキトさんが語り始める。

〇〇「特殊部隊……」

耳慣れない言葉にオウム返しになってしまうと、アキトさんは小さく頷いてくれた。

アキト「植物の毒は科学的に作られる毒と違い、使用された証拠も残りにくいものになります。 よって、それらを欲する国や組織から求められることが多くありました。 私達はそういった要求に応えるために、集められたのです」

(証拠が残らないって言うのはつまり……悪用もするってこと?)

アキト「そうすることで、私は……まともな防衛能力のない国を守るのだと自分に言い聞かせ……。 私は、なんと愚かで弱いのでしょうか……。 綺麗な花だと愛でられたいと望みながら、その毒を……嫌われるその原因である毒を。 ……利用しているのですから」

〇〇「アキトさん……」

悲痛な告白に、胸が苦しくなる。

(アキトさんは、花を毒として利用することを望んでない……)

(でも、こんなに苦しんでいるのは……そうしなければいけない理由が?)

うなだれるアキトさんにそんなことは問えるはずもなく、

〇〇「アキトさん……そんなに自分を責めないでください」

アキト「いえ、責めなければなりません」

まるで自らをどこまでも追い詰めようとするかのように、アキトさんは言い切った。

アキト「それに……もうこれ以上は、お話できません」

〇〇「え……」

アキト「……」

アキトさんの瞳は、まるで光を失ってしまったかのようだった。

アキト「そして、明日にはどうかお帰りください」

〇〇「帰る……?」

アキト「この話を聞いてしまったことで、貴方を危険な目に遭わせるわけにはいきません。 ですからどうか、お帰りを……」

〇〇「あ……」

突然の別れの言葉に呆然とする私の手から、アキトさんの手が離れていく。

アキト「貴方と出会えて……本当によかったです」

最後、まるで泣き出してしまいそうな笑みでアキトさんはそう言った。

そして……アキトさんは、部屋の扉の向こうへ姿を消してしまう。

(そんな……)

それから一時……呆然としていた私は、慌てて立ち上がった。

〇〇「アキトさん! 待って…-」

夢中で、部屋の扉を開けた瞬間…-。

??「夜の一人歩きは危ないですよ。姫君」

〇〇「っ……!?」

突然、誰かに取り押さえられ、身動きが取れなくなってしまった…-。

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