アキトさんと偶然街で出会い、一緒に城へと戻ってきたものの……
その最中も、アキトさんは固い表情でほぼ押し黙っていた。
(何も……聞けなかったな)
―――――
店員『『夜光の花』……』
〇〇『え……?』
―――――
花屋の店員さんがどこか悲しげにつぶやいた、『夜光の花』という言葉…-。
(アキトさん達を見て、そう言ってた)
(夜光の花って、いったい……?)
アキト「……街は、いかがでしたか?」
急に話しかけられ、びくりと肩が跳ねた。
〇〇「ま、街ですよね……とても素敵でした!」
アキト「……」
鋭い眼差しが、うかがうように私を見つめている…-。
〇〇「あの……」
アキト「そうですか、それはよかったです」
小さく息を吐いた後、アキトさんは表情を柔らかくさせた。
(よかった……)
〇〇「はい。そういえば、お花屋さんで黄色や白の曼珠沙華を見たんです。 赤い花も私は好きですが、黄色や白もとても素敵なんですね」
アキト「ありがとうございます。貴方にそう言っていただけると、とても嬉しいです。 あれらは、私が園芸品種として推奨しました。赤い花は……不吉だと嫌われてしまうので」
悲しげに目を伏せるアキトさんを見ていると、花畑でのことを思い出す。
―――――
アキト『綺麗、ですか……貴方はとても心が美しいのですね。 ある人はあれを見て、血のようだと言いました』
―――――
〇〇「だけど、やっぱり私は赤い花も素敵だと思います。 きっと、曼珠沙華を美しいと思う人はたくさんいますよ」
(あの花畑の景色は、とても綺麗だったから……それに)
―――――
〇〇『……可愛い』
店員『ありがとうございます! 最近では、園芸品種として赤い花以外にもいろいろと作られているんですよ』
―――――
(皆、曼珠沙華のことを愛してる)
〇〇「だから、アキトさんの思い……皆さんに愛される花にという思いは…-。 私はきっと、叶うと思います」
アキト「〇〇さん……」
アキトさんの顔が、ゆっくりと……これまでで初めて見るほどに、喜びに満ちた優しい笑顔になっていく。
〇〇「きっといます」
アキト「ええ……ええ、そうですね。それに……」
喜びに微笑んでいたかと思えば、不意にアキトさんの表情にまた陰りが生まれる。
〇〇「アキトさん……?」
心配になり、そっと手を重ねようとすると……
〇〇「!」
手首を力強く握られ、ぐっと彼に引き寄せられる。
(アキト……さん……?)
暗く悲しさをたたえた瞳が、私を見つめていて…-。
どくん、と心臓が高鳴る。
アキト「私は……私ときたら……。 曼珠沙華の民達もあんなに頑張ってくれているのに……愛される花になろうと必死に……。 それなのに私は……」
じっと私を見つめていた瞳が、またゆっくりと伏せられていく。
(アキトさん……)
〇〇「……アキトさん。教えてください」
その瞳の奥にあるものを知りたくて、私は口を開く。
〇〇「夜光の花というのは、何なのでしょうか?」
そう問うと、アキトさんの体が微かに震えたことがわかった…-。