第4話 街で見た彼

曼珠沙華の見える花畑へ行った翌日…-。

アキトさんが仕事をしている間、従者の方にヴィラスティンの街を案内してもらうことになった。

街は相変わらず花や緑で溢れ、活気に満ち満ちていた。

花の香りがそこはかとなく漂い、とてもいい気持ちになれる。

(本当に素敵な街……)

ふと、大きな花屋に置かれた白と黄色の曼珠沙華が目に入った。

思わず、引き寄せられるように花屋へと足を運ぶ。

〇〇「……可愛い」

店員「ありがとうございます! 最近では、園芸品種として赤い花以外にもいろいろと作られているんですよ」

〇〇「そうなんですね」

嬉しそうに教えてくれた店員さんにつられ、私も笑顔になる。

店員「まあ曼珠沙華ってのは、死人花だとか地獄花だとか言われて不吉がられますが……。 なんせアキト様が皆に美しいと愛でられる花になろうって力入れられてますから!」

〇〇「アキトさんが……」

(そういえば……)

―――――

アキト『貴方は、綺麗だと言ってくださった。 私はそれがとても嬉しかったのですから、どうかそんな顔をしないでください』

―――――

(あの時のアキトさん……すごく嬉しそうだった)

(あまり表には見せないけれど……この花を本当に大切に思っているんだ)

〇〇「本当に素敵ですね。アキト王子も素晴らしいです」

店員「ええ、そりゃもう!」

店員さんと、そんな会話をしていた時だった。

にわかに通りが騒がしくなり、振り返ると…-。

アキト「……」

(アキトさん……!?)

アキトさんを含む一団が、どこか異様な雰囲気を放って街を歩いていた。

(アキトさんと……誰なんだろう。他の人達は顔の半分が隠れて、よく見えない……)

威圧感を感じる、冷やかさをまとった不思議な集団……

店員「『夜光の花』……」

〇〇「え……?」

店員さんのつぶやきを、聞き返そうとした時…-。

アキト「〇〇さん、街をご覧になっていたんですね」

〇〇「……アキトさん……お疲れ様です」

驚きながらもかろうじてそう答えると、アキトさんはすぐに私の背に手を回した。

アキト「ええ、では戻りましょう」

〇〇「え……?」

これまでとは全く違う、有無を言わせないような態度に、言葉を失ってしまう。

(どうして……? 何か、焦っているような)

〇〇「あの、まだ……」

困惑しつつ何とかそう言ったものの、アキトさんはすぐに頭を振る。

アキト「冷えてきましたので、戻りましょう」

その場ではそれ以上聞けないまま、固い表情を崩さないアキトさんと一緒に城へ戻った…-。

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