第2話 曼珠沙華には毒がある

国へ招待してくれたアキトさんは、その後、花畑へと私を連れて行ってくれた。

〇〇「あれは……!」

対岸に広がる真っ赤な絨毯のような光景に、目を奪われる。

アキト「貴方が、我が国を花が多く美しいと言ってくださったので、あの花畑をお見せしたいと思いました」

〇〇「すごい……一面、真っ赤ですね……」

向こうの花畑を赤く染め上げていたのは、深紅の曼珠沙華だった。

〇〇「綺麗ですね……」

感嘆のため息と共に、心のままに感想をこぼすと……

アキト「綺麗、ですか……貴方はとても心が美しいのですね」

〇〇「え……?」

ふと、心がざわめくのを感じてアキトさんを見る。

アキト「ある人はあれを見て、血のようだと言いました」

悲しく儚げに微笑む姿が、あの真っ赤な花の絨毯と同じくらい強い衝撃を私に与えた。

〇〇「そんな……」

アキト「けれどあながち間違いではないんです。 曼珠沙華の毒のせいで失われた命もある……それを思えば、その感想も納得できます」

どこか諦めたような表情で、アキトさんはつぶやく。

〇〇「曼珠沙華には、毒があるんですか?」

アキト「ええ、そうです」

曼珠沙華を切なげに見つめていたアキトさんが、静かに瞳を閉じる。

アキト「けれど……」

〇〇「っ……」

瞳をそっと開いたアキトさんは、次の瞬間、ふわりと幸せそうに微笑んだ。

アキト「それでも貴方をここへ連れて来たかったのは、どこか期待をしていたからでしょうか。 結果、貴方は……私にとても素敵な言葉をくださった」

〇〇「私が……ですか?」

アキト「はい。 貴方は、綺麗だと言ってくださった。 私はそれはとても嬉しかったのですから、どうかそんな顔をしないでください」

(こんなふうに笑ってくれるなんて……思わなかった)

予期せぬ笑みに、とくとくと鼓動が速まるのを感じる。

アキト「貴方を招待して、本当によかったです」

それから私達は、曼珠沙華の花畑を見ながらたくさん話をした。

〇〇「でも……こんなに綺麗なのに毒があるなんて」

アキト「主に球根に毒があります。ですが、毒抜きは簡単にできるので、非常食になることもあるんです」

〇〇「じゃあ、そんなに怖いものではないんですね」

少し安堵を覚えてそう言うと、アキトさんはまた嬉しそうに微笑んだ。

アキト「そう思っていただけると嬉しいです。 毒は……考え方を変えれば、薬にもなります。だから…-」

アキトさんがそこまで話した時…-。

アキト「!」

花畑に遠く人影が見え、アキトさんは口をつぐんでしまった…-。

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