澄んだ光が街を包みこむ時……
ついに競技会当日を迎えた。
開幕を告げる花火が、青空を彩る。
○○「わぁ……! すごい!」
街のいたる所で行われるさまざまな競技に、応援の声や歓声が上がっている。
屋台からは、お肉の焼ける香ばしい香りや、甘いメープルの香りがただよう。
(お祭りみたいで楽しいな)
○○「えっと、アインツさんが出る競技の会場は……」
辺りを見渡し、剣の競技会場を探す。
(早くアインツさんの笑顔が見たいな)
剣の競技会場は、街の中央にある大きなホールだった。
その中へ入ると、出番を待つ選手の中からアインツさんを見つけた。
たくさんの選手たちの奥で、彼は一人静かに椅子に座っていた。
○○「アインツさん」
アインツ「よ、よう、○○!」
アインツさんが立ち上がり笑顔を浮かべる。
彼の笑顔に、私の頬が緩んだ。
○○「もうすぐですね」
アインツ「そうだな、もうすぐだ!」
○○「練習の成果が発揮できるといいですね!」
アインツ「そうだな! 発揮できるといいな!」
○○「……優勝目指して頑張ってくださいね」
アインツ「そうだな! 頑張ってくださる!」
(アインツさん……?)
○○「応援してますね」
アインツ「そうだな! 応援する……いや、してくれ!」
(やっぱり、アインツさんの態度がおかしいような……)
じっと見つめると、アインツさんが視線を彷徨わせる。
○○「……大丈夫ですか?」
アインツ「えっと……」
○○「アインツさん……?」
アインツ「そっそんな顔するな! とにかく大丈夫だ! オレの活躍、期待していてくれよ!」
彼の笑顔が、私には無理しているように見えてしまう。
でも…―。
○○「はい、わかりました」
彼に笑いかけると、私は控え室を後にした。
(不安をあおっちゃダメだよね)
(本当は何でも話して欲しいけど……)
彼が自分の気持ちを話してくれない事に、寂しさを覚える。
その時…―。
アインツ「どうしたんだオレは! らしくないだろこんなの!」
苛立ったようなアインツさんの声が、扉の向こうから聞こえてきた。
(アインツさん……??)
…
……
やがて、剣の競技が始まった。
立て続けにミスを繰り返し、アインツは思うように試合を運べていなかった。
アインツ「くそっ! 何でうまくいかないんだ!?」
焦りの色が、アインツの顔に表れている。
アインツ「○○にかっこいい所をみせたいだけなんだ! なのにアイツに見られているってだけでオレは……! どうしてこんなに、胸や手が震えて……!! これはなんなんだ? アイツを見るたびに熱くなる気持ちは!」
その時…―。
○○「アインツさん、頑張ってください!」
○○の自分を応援する声が、アインツの耳に届いた。
アインツ「!! あるじゃないか! この気持ちを言いあらわす言葉が!」
息を整えると、アインツは剣を握り直した。