第4話 泥んこファンサービス

行き交う人々の足で蹴られたユリオ君のスマホは、どんどん遠ざかっていく…-。

ユーリ「おい、コラ! 待てって! 俺のスマホだぞ!」

ユリオ君は、人と人との隙間を華麗にすり抜け追いかける。

〇〇「待って、ユリオ君…-!」

その時、ユリオ君の目の前に突然、猫又が飛び出して来た。

ユーリ「うおっ!?」

彼はジャンプして猫又を避けると、見事に着地してポーズを決める。

ユーリ「クソ……つい」

泥達の歓声がひときわ大きくなったかと思うと、彼女(?)達はぬいぐるみやプレゼントの袋をユリオ君に投げ始めた。

ユーリ「ここは氷の上じゃねえ! それにこれ、泥だらけじゃねえか!!」

投げられた物を拾い上げるユリオ君の頬に、次々に飛んでくる泥が付着していく…-。

〇〇「わ、私も手伝うよ」

慌てて彼と一緒に、泥達が投げたプレゼントを拾うと……

ユーリ「つーか……あいつら、いつの間に用意したんだよ、これ」

文句を言いつつ、彼はプレゼントをひとつひとつ丁寧に拾い上げていた。

(ファンの子達を大事にしてるんだ)

ふと、ユリオ君の瞳に警戒の色が宿る。

ユーリ「なんか……また増えてねえか?」

遠巻きにユリオ君を見守る泥達の数が、さっきより確実に増えている。

〇〇「……そうみたいだね」

泥1「ユーラチカ……握手……」

ユーリ「握手なんかしたら泥だらけになるだろーが」

そう言いながらも、彼は一列に並んだ泥達の握手に律儀に応える。

ユーリ「うわ、ぬるぬるする……キモ」

(すごい光景……)

泥2「ユーラチカ……これ……」

どこから調達したのか、猫耳のカチューシャをユリオ君の頭につけた。

ユーリ「あぁ? なんだこれ、なんでここでこんなのつけて写真撮んなきゃなんねぇんだよ!」

泥3「……ポーズ……」

ユーリ「……!」

けれど記念撮影にも断ることなく応じる彼の姿は、慣れた様子だった。

〇〇「ファンの要望に全部応えるなんて、すごいね。泥だけど……」

ユーリ「人間だろうが泥だろうが関係ねぇよ。俺のファンは俺のファンだから」

分け隔てなくファン対応するユリオ君の姿勢に、なんだか心が温かくなる。

(口は悪いけど、優しい子なんだな)

ユーリ「クソッ……完全に見失ったじゃねぇかよ。俺のスマホ…-」

(あ……)

泥達が嬉しそうにうごめく傍らで、私達は辺りに目を凝らす。

けれど、ユリオ君のスマホは見つけられなかった…-。

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