第2話 泥からこんにちは!

それから…-。

私達は街外れの森で、柔らかい白い湯気が立ち上る温泉を見つけた。

ユーリ「これが理想郷の湯ってやつか?」

ユリオ君は、木漏れ日から照らす露天風呂を覗き込む。

私も同じように覗き込むと、灰色のさらりとした泥の湯が見えた。

〇〇「泥風呂みたいだね」

ユーリ「なんだ、思ったより普通だな。カツ丼とこの風呂とたいして変わらねえ」

そう言いながら、ユリオ君は自分の上着に手をかける。

ユーリ「さっさと入ってとっとと帰る…-」

一瞬、彼の服の下から白い肌が覗いて、私の胸が騒ぎ出す。

ユーリ「おい……お前、何見てんだよ」

冷たい眼差しに耐え切れず、思わず私は……

〇〇「ち、違うよ、そういうつもりじゃ…-」

ユーリ「じゃあ、どんなつもりなんだよ。変態か?」

慌てて弁解する私に、ユリオ君は冷静に言い放った。

ユーリ「……とにかくジャマだ。あっち行ってろ」

恥ずかしさで熱くなった頬を隠すように、私はその場から離れたのだった…-。

……
一人になったユーリは、勢いよく泥風呂に体を沈めた。

ユーリ「……ぬるいな」

乱れたまとめ髪を耳にかけたその時……

謎の声「おぬしの恐れ……あいわかった!」

ユーリ「は……?」

それから私は古い木の下で、温泉に入ったユリオ君を待っていた。

すると…-。

ユーリ「うわあああああああああ!」

〇〇「ユリオ君!?」

悲痛な叫び声が聞こえ、私は思わず露天風呂へと駆け寄った。

〇〇「!?」

そこで繰り広げられている光景に、私は目を疑った。

人型をした泥がうごうごと、何体もユリオ君を取り囲んでいて…-。

ユーリ「は!? なんだよこれ!?」

驚愕の表情を浮かべるユリオ君の前で、人の形をした泥は、何やら聞き取れないうめき声を上げている。

ユーリ「おい……この温泉、本当に理想郷の湯なんだろうな?」

〇〇「だと思うけど……」

ユーリ「マジかよ……これのどこが理想なんだよ! 泥ゾンビ襲来してっぞ!」

そうこうしているうちに、泥達はまるで化け物のように次々と温泉から這い出てくる。

恐ろしくなって後ずさった私の足に、何かがあたった。

見ると枯葉に埋もれた札があり、そこには『地獄の湯』『己が逃げ出したいものが現れるであろう』と書かれている。

〇〇「……ごめん! この温泉、違うみたい」

ユーリ「は? 違う? じゃあなんだってんだ!」

〇〇「自分が逃げ出したいと思うものが現れる、地獄の湯だって…-」

ユーリ「はあああああああ!?」

ユリオ君の声に呼応するように、泥達は逃げ場を失った彼へ我先にというように手(?)を伸ばした…-。

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