第5話 2人だけの休暇

傾いた陽の光が、空に浮かぶ雲を茜色に染め上げている…-。

アルタイル「日も暮れてきたし、そろそろ戻るか」

(もうそんな時間……)

地面に伸びた二つの影を見つめていると、彼と離れがたい気持ちが強くなった。

私はアルタイルさんを見上げ、小さく頷く。

(もっと一緒にいたいけど……仕方ないよね)

すると……

アルタイル「……まいったな。そんな顔をしないでくれ」

切なげに瞳を揺らす彼と、視線がぶつかった。

〇〇「すみません。わがままを言ってしまって…-」

アルタイル「いや。やっぱり、もう少し街を見て回ってもいいか?」

〇〇「え……」

アルタイル「次はいつ廻天へ来られるかわからないからな。街をもっと見ておきたいんだ。 それに……。 二人でゆっくり過ごせる時間が惜しいと思うのは、俺も同じだ」

〇〇「……!」

穏やかに輝く瞳が、私をじっと見つめている。

〇〇「ありがとうございます」

アルタイル「じゃあ、行こう」

歩き出すと指先と指先が触れ合い、自然と手を繋ぎ合った。

彼の大きな手がしっかりと私の手を包み込んでくれる。

アルタイル「ありがとう。〇〇」

〇〇「……?」

アルタイル「……自由に過ごすことが、こんなに楽しいものだと、気づくことができた」

緩やかな石畳の道をのんびりと歩きながら、彼の言葉に耳を傾ける。

アルタイル「公務は王子として当然の務めだと思うが、たまにはこうして肩の力を抜くのもいいものだな」

〇〇「気分転換になったのなら、よかったです」

凛々しい彼の横顔を横目に、夕焼け色に彩られた街を歩いていると……

アルタイル「ここは……?」

揺らめく湯気が、あちらこちらから立ち上る。

辺りにある温泉から、入浴を終えたと思われる恋人達が腕を組んで歩く姿が目に入った。

アルタイル「……なあ」

〇〇「?」

アルタイル「一緒に温泉に入らないか」

〇〇「え!?」

突然の言葉に、心臓が飛び跳ねる。

アルタイル「……せっかくここにお前と来られたから、ここでしかできないことをしたい」

夕陽に照らされたアルタイルさんの顔は、真っ赤に染まっていた…-。

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