第2話 抜け駆け

ワールドサロンでは、各国の特産物のマーケットや剣術大会、星占いの館など、それぞれの国の特性を活かした、さまざまな催しが行われていた。

〇〇「どの国もすごく力が入ってますね」

ルーク「そうですね。全部見て回ろうとしたら、夜になってしまいそうです。 今夜の舞踏会には、〇〇さんも参加されるんですよね?」

首を傾げてこちらを見るルークさんに、私は曖昧に頷く。

〇〇「はい、そうなんですけど……」

ワールドサロンの最終日である今夜、舞踏会が開かれることになっている。

(大丈夫かな……)

各国の王族が大勢集まる中でダンスをすることに緊張していると、ルークさんが心配そうに私の顔を覗き込んだ。

ルーク「……〇〇さん、どうかしたんですか?」

〇〇「ご招待いただいたのは嬉しいんですけど、上手に踊れるかどうか心配で……」

抱いている不安を素直に伝えると、ルークさんが柔らかく微笑んだ。

ルーク「ダンスは男性がリードするので、大丈夫ですよ」

はにかんだような彼の表情に、くすぐったい気持ちになりながら……

〇〇「少し安心しました。ありがとうございます」

ルーク「ええ。そんなに緊張しなくても大丈夫ですよ」

〇〇「でも、もう少しダンスの練習をしておけばよかったです」

ルークさんは、しばし考えるように宙を見た。

ルーク「……では、少し私と練習してみますか?」

〇〇「そうですね……もしルークさんがよければ」

そう答えると……

〇〇「……!」

ルークさんの手が、私の腰にそっと添えられた。

(えっ……)

優しく抱き寄せられ、鼓動が急激に速くなる。

顔を上げると、ルークさんがまっすぐ私を見つめていた。

ルーク「……綺麗な姿勢ですよ」

(すごく、近い……)

凛としたその様子に、どんどん胸が高鳴っていく…-。

けれど人の声が近づいてくると、ルークさんは私からすっと手を離してしまった。

〇〇「……ルークさん?」

私達の横を、数名の男性が通り過ぎる。

ルーク「……」

ルークさんは彼らを目で追うと、ふっと笑みをこぼした。

ルーク「すみません。アヴィ達かと思いまして……。 一人、抜け駆けしてしまっているみたいで……少し心苦しくなりました」

〇〇「抜け駆けなんて……私は思わないです」

私がぽつりとつぶやくと、ルークさんは目を見開き、照れたように笑った。

ルーク「……抜け駆けしても、いいんですか? せっかくのチャンスだったのに……残念なことをしてしまいました」

〇〇「え……」

ルーク「……なんて、少し調子に乗り過ぎました。すみません」

(なんだか、いつものルークさんじゃないみたい……)

本気のような冗談のような彼の言葉に、私は上手く言葉を返すことができず、わずかに熱くなる頬を自覚しながら彼を見つめ返した…-。

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