第2話 二人きりの特別な時間

人々で賑わう小説展の会場内を、カゲトラさんにエスコートされながら歩く…-。

カゲトラ「まずは向こうの会場に行くか。 あっちでは実際に本を手に取ることもできるし、気に入ったら借りたり買ったりもできる。 今回のために、国中からいろいろ集めたからな。 気に入ったもん見つかるまで、いろいろ手に取ってみるといい」

〇〇「楽しみです」

笑顔を向けると、カゲトラさんも小さく微笑む。

先ほどから彼は着物の私の歩幅に合わせ、ゆっくりと歩いてくれていた。

(やっぱりカゲトラさんって、優しいな)

最初に出会った時こそ、怖い人かと思ったけれど……

絵本に対する姿勢や人との接し方を見て、私の考えは変わっていった。

(以前と変わらないカゲトラさんでよかった)

そう思っていると…-。

カゲトラ「……なんか新鮮だな、こういうの」

〇〇「え……?」

カゲトラさんの言葉に意味がわからず、彼を見上げる。

カゲトラ「いつもイブキや街の子ども達に、お前を独占されちまってたからな。 こんなふうに二人きりでってのは、なかなかなかっただろ?」

言われてみれば、カゲトラさんと過ごす時はだいたい、大はしゃぎの子ども達と一緒だった。

(カゲトラさんは面倒見が良くて、子ども達のことをいつも一番に考えてる優しい人だから……)

病気がちの妹……イブキちゃんを始めとした街の子ども達から、彼はとても慕われていて、その姿を思い返すと自然に笑みがこぼれる。

〇〇「カゲトラさんは、子ども達に大人気ですから」

カゲトラ「それを言うならお前だろ。 あいつら事あるごとに、お前は次いつ来るんだって大騒ぎで…-。 っと、悪い。せっかく二人きりだってのに、結局子ども達のことばっかだな」

カゲトラさんは苦笑すると、仕切り直すかのように咳ばらいをし……

カゲトラ「〇〇。 お前さえよけりゃ、今後はこういう時間をもっと増やしていこう」

〇〇「……!」

思いもよらない言葉に思わず驚いてしまったけれど、すぐに胸が温かな幸福感で満たされる。

〇〇「はい」

ほんのりと頬が熱くなるのを感じながら頷くと、カゲトラさんは、いつもより柔らかな笑みを浮かべたように見えた…-。

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