第3話 募る気持ち

翌日、私は与えられた部屋で、メイドさんと共に、週末の晩餐会に着ていくドレスを選んでいた。

だけど……

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トトリ『彼女とは父上の思っているような関係ではないですよ』

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昨日のことを思い出すと、ドレスを選ぶ手が止まってしまう。

(どうしたら大人なトトリさんと釣り合うような女性になれるんだろう……)

メイド「〇〇姫、こちらのドレスなどはいかがでしょう?」

〇〇「……この真っ赤なドレス?」

勧められたドレスは鮮やかな深紅の胸元が大きく開いたドレスだった。

(これは少し派手すぎる気が……)

自分では着たこともないドレスを前に戸惑っていると……

トトリ「失礼、よろしいでしょうか?」

〇〇「……っ、はい」

扉を開けると、トトリさんは純白の百合の花束を持って立っていた。

〇〇「その花は?」

トトリ「部屋に飾れば君の心がもっと安らぐかと思ったので、庭師からもらってきたんです」

〇〇「素敵……ありがとうございます」

花束を受け取り、香しい花の匂いを吸い込む。

トトリさんはそんな私を見て微笑むと、テーブルの上に広げられた赤いドレスを見た。

トトリ「晩餐会に着ていかれるドレスを選んでいたのですか?」

〇〇「はい。でも、なかなか決められなくて……」

明らかに自分には似合わなさそうな赤いドレスを見て、眉を寄せる。

トトリ「ならわたしが君に似合うドレスを見繕いましょう」

思ってもない願い出に私は……

(トトリさんが、私に……)

くすぐったいような、嬉しいような気持ちが胸に広がっていく。

〇〇「……是非、お願いします」

トトリ「ええ、かわいらしい君に一番合うドレスを選びましょう。 君にはこの赤いドレスより、もっと落ち着いたデザインの方がふさわしいでしょう」

さまざまなドレスの中からトトリさんは私のための一着を選んでくれる。

トトリ「これなんかどうでしょう? こうやってこの百合の花をあしらうのもいいかもしれません」

トトリさんは、上品な淡いピンクのドレスを私の肩に合わせる。

そして私の手から百合の花を何本か抜き取り、アクセサリーをつけるように胸元を飾った。

トトリ「ね、この方がずっと君のよさが引き立つし、華やかですよ」

〇〇「素敵……いつもの私と全然違うみたいです」

鏡の前に映ったぐっと大人びた自分の姿に思わず声が漏れる。

トトリ「喜んでもらえてよかった」

私を見つめながら優しく微笑む彼に、胸が音を立てる。

トトリ「では、わたしはこれで」

トトリさんが私に背を向け、部屋を出て行こうとする。

〇〇「あ……」

(まだ、きちんとお礼も言ってない……!)

〇〇「あの、トトリさ……!」

私は一歩、足を進み出すと……

ドレスの裾をヒールで踏みつけ、体勢を崩してしまう。

(……!)

トトリ「〇〇さん!」

振り向いたトトリさんが駆け寄って、私の体を素早く支えてくれた。

トトリ「危ないですよ」

〇〇「あ、ありがとうございます……」

トトリ「いいえ。でも、そのヒールは少し履き慣れてないと危ないかもしれませんね。 せっかくですから、靴も週末までにわたしが選んでおきましょう。今の君に一番似合うものを……」

〇〇「……」

彼の紳士めいた言葉に、かっと頬が熱くなるのを感じる。

柔らかな半円を作った唇に、人差し指をあてて彼が微笑んだ。

〇〇「トトリさん……」

トトリ「だから、週末を楽しみに待っていてくださいね?」

そう言って、トトリさんは来た時と同じように静かに部屋を去って行った。

(でも、週末は……)

晩餐会は、約束の滞在期間の最終日……

翌日にはトリアールを私は離れてしまう。

言葉にならない気持ちのまま、ぎゅっと胸元で手を握りしめた……

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