第5話 真摯な眼差し

宝石のように輝く夕陽が、空を橙色に染め上げる頃…-。

どうにか恋人の振りを完遂し、私達は宝石店を後にした。

サイ「無事に話が聞けてよかったね」

〇〇「そうですね」

私達ににこやかに接客してくれた、女性店員さんのことを思い出す。

〇〇「作戦成功ですね」

サイ「うん。ちょっと焦っちゃったけど、君がいてくれて助かったよ」

(恋のお手伝い、か。素敵なお仕事だな)

そこでふと、サイさんのことが気になってしまう。

(サイさんの恋は……)

サイ「どうしたの? 何か心配事?」

顔を覗き込まれ、予期せず心臓が跳ねる。

〇〇「いえ、なんでもありません!」

サイ「……本当かな?」

間近で綺麗に目を細められると、さらに鼓動が速くなってしまう。

〇〇「あ……」

サイ「君は素直だから、僕ですらわかっちゃうよ」

くすりと笑われ、私は観念して口を開いた。

〇〇「あの…-」

サイ「そうだよね。結局、好きなものは聞き出せなかったし」

〇〇「え」

サイ「怪しまれずに自然に聞き出すには、どうしたらいいかな。 ……探偵って難しいね、考えが甘かったみたいだ。きちんとやり方を考えなきゃ」

〇〇「……」

真摯に依頼と向き合うサイさんを見ていると、自分がものすごく恥ずかしくなった。

サイ「〇〇?」

〇〇「いえ……なんだかすみません」

サイ「どうして謝るの?」

〇〇「それは…-」

サイ「ふふっ……変な〇〇」

ちらりと視線を上げると、夕陽に照らされたサイさんの横顔が目に入った。

(サイさん……)

その真摯な眼差しに心が打たれる。

(普段は、物静かに皆を見守ってるって感じだけど……)

サイ「もう一度宝石店に行って、周囲の人の話を聞くのがいいかもしれないね」

〇〇「そうですね」

一生懸命な姿を応援したくて、私も気を引きしめた。

城が近づいてきた時、ふとサイさんが道で足を止める。

サイ「……」

そこは、依頼人の男性と話をした喫茶店の前だった。

サイ「依頼人は、彼女とお付き合いがしたいんだよね」

〇〇「はい。一目惚れって言ってました」

サイ「……」

喫茶店の方に向けれていた視線が、ゆっくりと私に移る。

サイ「なんだか、他人事とは思えなくてね……彼の気持ちを応援してあげたい」

そう言ってサイさんが浮かべた綺麗な微笑みに胸が音を立てた。

〇〇「サイさん……」

サイ「ふふ、こんなところでぼんやりしていられないね。帰ってまた相談しよう」

〇〇「はい」

赤くなった頬を夕焼けのせいにして、サイさんと私は再び歩き出した。

穏やかな時間のすぐ後ろに、事件の影が迫っていることも知らないまま…-。

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