第3話 これは探偵業?

いつの間にか私の足元にいた猫が、一つ欠伸をする。

猫「な~」

(首輪もついてないし……野良猫かな?)

リド「ハハッ、なんだお前」

リドが撫でようとすると、猫が威嚇するように爪を伸ばした。

リド「……っ! いってえ!」

リドの手には一筋の傷ができてしまい……

〇〇「リド、大丈夫!?」

リド「あ、ああ。びっくりしたけど……」

私とリドのことなど気にも留めない様子で、猫は悠々としっぽを揺らしながら去っていく。

その姿に不思議と目を奪われた。

リド「くそっ……なんか悔しいな」

〇〇「なんだか不思議な猫だったね」

リド「ああ……まあ、今は猫より依頼だな。気を取り直して次に行こうぜ」

ため息を一つ吐いて、リドが立ち上がる。

その時…-。

リド「ん?」

子どもの泣き声が聞こえ、私達は顔を見合わせた。

リド「行ってみよう!」

言うや否や、リドは声がする方へ駆け出した…-。

……

泣いていたのは、年の頃5~6歳の小さな女の子だった。

リド「どうしたんだ?」

女の子「風船が……」

女の子の視線を追うと、大きな木の枝に風船が引っかかり、ふわふわと揺れている。・

リド「よしっ! オレに任せとけ」

〇〇「リド、気をつけて……けっこう高いところにあるから」

リド「心配すんなって!」

私の心配をよそに、リドは木にするすると登っていく。

リド「取ったぞ!」

けれど次の瞬間……リドは枝にかけていた足を滑らせてしまった。

リド「う……わああああ~!」

〇〇「リ、リド……!」

慌てて彼の元へ駆け寄ると、リドは地面に打ちつけた腰を痛そうにさすって……

リド「いっててて……」

女の子「リドさま、だいじょうぶ?」

リド「あ、ああ! ほら、風船も無事だ!」

痛みを押し隠すように笑い、風船を女の子に手渡した。

女の子「わあ……ありがとう、リドさま!」

女の子は満面の笑みでお礼を言うと、元気に走り去っていった。

その後ろ姿を見送りながら……

リド「……『ありがとう』って笑って言ってくれるのって、すっげー嬉しいよな」

いつまでも女の子を見送るリドの横顔を、太陽の光が明るく照らしている。

〇〇「……うん」

その優しい笑顔に、私は思わず見とれてしまった。

リド「さ。ちょっと寄り道しちまったけど……依頼をこなさねえとな!」

気合いを入れ直し、それからリドと私は次々と依頼主の元を訪ね歩いた…-。

……

気がつくと空が茜色に染まっていた。

(もうこんな時間……)

リド「探偵って……こんなだっけか?」

〇〇「うーん……」

子守り、ペット探し、荷物運び…-。

体を張った仕事が多かったせいか、リドの服や髪はすっかり乱れていた。

リド「ティーガが読んでたグレアムの小説ではさ、事件を華麗にカッコよく解決……だったはずなんだけど」

〇〇「でも皆、すごく喜んでたよ。助手として鼻が高いな」

素直な気持ちを伝えると、リドの頬がわずかに赤く染まった。

リド「……ったく。あんたには敵わねえな」

そして、照れ隠しのように帽子を目深に被り直す。

リド「確かに皆が喜んでくれたのは嬉しいんだ……けど、やっぱオレ、何しても普通だから。 ティーガ達なら、もっと探偵っぽくできるんじゃないかって思うと、なんつーか……」

いつになく低い彼の声色に、胸がきゅっと切なくなった。

〇〇「私は、そんなリドが好きだけどな」

リド「……え?」

リドにまっすぐに見つめられ、私はハッと我に返る。

〇〇「……リ、リド! ほら、帽子が曲がってる」

途端に気恥ずかしくなり、誤魔化すように彼の帽子に手を伸ばす。

けれど、それを遮るように彼が私の手を掴み……

リド「ずりーよな、あんた……」

もう片方の手で、私の髪の毛をくしゃくしゃと触る。

〇〇「……っ、リド!?」

リド「これでオレと一緒だ!」

乱れた私の髪を見て、リドがおかしそうに声を出して笑った。

〇〇「……! もう!」

リド「ハハッ……それより、あんたにも明日からはもっと活躍してもらうからな。 頼むぜ? オレの助手さん?」

いたずらな笑みを向けられ、私は……

〇〇「うん、頑張るね!」

リド「おっ、いい返事だな! 〇〇君」

〇〇「明日からは、救急セットも持参した方がいいかな?」

リド「怪我する前提かよ!」

夕陽で映し出された私とリドの影が、仲良さそうに揺れていた…-。

<<第2話||第4話>>



シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする