第2話 助手として

机の上に置かれた懐中時計が、コチコチと小気味よい音を立てている…-。

リド「あんたなあ……」

リドは呆れたようにため息を吐いて、私の顔を覗き込んだ。

リド「……他人事だと思ってるだろ」

〇〇「そんなことないよ」

リド「本当かあ?」

顎に手をあてて考える彼に、思わず笑みを浮かべてしまう。

不意に、リドの目が何かを企むようにいたずらな輝きを帯びる。

リド「そうだ! あんたも手伝ってくれよ!」

〇〇「え?」

驚いて返事ができずにいる私に、リドが言葉を継ぐ。

リド「オレの助手ってのは、どうだ?」

(私が探偵の助手を……)

助手という言葉の響きが、楽しい何かを予感させる。

〇〇「うん。私でいいなら」

リド「よっし、決まりだな! そうだ、今からちょうど依頼主と会うんだよ」

リドはそう言って私の肩に手を置き、顔を覗き込む。

リド「しっかりサポート頼むぜ、〇〇君?」

〇〇「うん……じゃなくて、はい!」

リド「ハハッ。あんた相変わらず素直だな」

〇〇「そうかな……?」

リド「ま、そういうところが好きなんだけど」

〇〇「えっ……」

『好き』という言葉に反応して、胸がドキリと音を立てる。

けれど、それは彼も同じだったようで……

リド「っ……! ほら、行くぞ!」

リドは赤くなった顔を私から逸らし、背を向けて歩き出したのだった…-。

……

私とリドは街へ出て、依頼主の元へと向かった。

リド「依頼主は……あそこだな」

見ると、白い髭を生やしたご老人が一人、ベンチに腰を下ろしている。

リド「よっ! じっちゃん!」

手を上げて挨拶しながら、リドはご老人の近くまで歩み寄った。

老人「おお……まさか、本当に王子が来てくださるなんて…―」

目を見開いて驚くご老人に、リドは屈託なく笑いかけた。

リド「依頼されたんだ、来ないわけねえだろ? 頼まれたモン、見つけてきたぜ!」

リドがご老人に得意げに酒瓶を差し出す。

緑色の一升瓶の中で、きらきらと金の粉が舞っていた。

老人「まさしくこれは、ワシが求めていた秘蔵の宝石酒……!!」

声を震わせて喜ぶご老人を見て、リドが嬉しそうに目を細める。

リド「行きつけの店のマスターに聞いたらさ、取り寄せてくれたんだ!」

老人「おお、おお……これが飲めたら、もう思い残すことはありません」

リド「いや! 元気でいてくれなきゃ困るぜ!?」

老人「なんとお優しい……ありがとうございます、リド王子!」

リド「どーいたしまして! 今度よかったら、オレにも飲ませてくれよな」

飾らない人懐っこい笑顔に、ご老人もつられるように笑っている。

(こうやって街の皆と親しくなれるのって、リドのいいところだな)

温かくなる心を感じながら、二人の様子を見ていると……

リド「ん?」

不意に彼の視線が私の足元へと注がれた。

リド「それ……何?」

〇〇「え?」

猫「な~」

いつの間にか私の足元に、ふくよかな猫がどすんと座っていた…-。

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