第3話 収穫祭の夕べ

アルフレッドさんと一緒にロトリアに滞在して、数日が経った。

(とってもいい天気……)

少し肌寒い風に混じり、人々の笑い声が聞こえる。

収穫祭は明日に迫り、街は日増しに賑わいを増していた。

アルフレッド「明日が本番だけあって、さすがに盛り上がっているね」

アルフレッドさんは、道ばたで幾つも行われている見世物の一つで立ち止まり、そう言った。

ピエロのような格好をした集団が、曲芸を披露している。

○○「本当ですね。皆、とっても楽しそう」

アルフレッド「ああ、ほら、あっちでは、チョコレート菓子を作っているようだ」

アルフレッドさんの手が、さりげなく腰に回される。

とくん、と鼓動が跳ねて、アルフレッドさんを見上げると……

アルフレッド「食べてみるかい?」

アルフレッドさんは、まなじりを下げて微笑んだ。

○○「アルフレッドさんは?一緒に食べませんか?」

アルフレッド「俺はいい。貴女が美味しそうに食べているのを見るほうが嬉しいからね」

そんなふうに言い返されて、頬が熱くなってしまった。

アルフレッド「さあ、どうぞ」

手の上にチョコレートを落とされ、私はそれを口に含んだ。

(お花の香り……?)

アルフレッド「これは……」

アルフレッドさんは、私に少し顔を寄せる。

アルフレッド「スミレの香りだね。いい香りだ」

何だか恥ずかしくなって空を見上げると、かすかに空が色づいていた…―。

アルフレッド「ん?どうしたんだい?」

○○「い、いえ……」

慌てて首を振ると、アルフレッドさんはくすりと笑った。

アルフレッド「ああ……夕暮れか」

そう言うと、彼は私の手を取りそっと自分の腕を握らせる。

アルフレッド「空ばかり見ていて、はぐれないように」

優しく微笑みかけられて、胸が小さく音を立てた。

(何だか恥ずかしいな……)

少し戸惑ってしまい、歩みを止める。

アルフレッド「可愛い人だね、貴女は……」

○○「……!」

アルフレッドさんの言葉に、さらに気恥ずかしさが増した。

それからしばらく、アルフレッドさんと腕を組んで歩いていると…―。

仮装をした人々が多くなっていることに、気がついた。

(アルフレッドさん……気乗りしないって言ってたけど、せっかくの収穫祭だから……楽しんで欲しいな)

アルフレッド「どうしたんだい?考え事かな?」

○○「え……?」

アルフレッド「思案顔だったよ。何を考えていたんだい?」

夕陽に照らされたアルフレッドさんの瞳が、ゆらゆらときらめいて見える。

その眼差しに見つめられて……私は、提案することにした。

○○「アルフレッドさん、仮装をしませんか?」

アルフレッド「仮装?この格好では物足りないかな?」

○○「あ、いえ……そういうわけではないんですけど、せっかくなので、普段しないような格好をしたら、楽しいんじゃないかなって」

けれど…―。

アルフレッド「俺は、こうして貴女の楽しそうな姿を見ているだけで十分だ。仮装などしなくても……ね」

(余計なこと言っちゃったかな……)

と、その時、一人の男の子が目の前で立ち止まった。

アルフレッド「……どうかしたかな?」

アルフレッドさんが優しく問いかける。

すると…

男の子「地味」

○○「……!」

男の子は、アルフレッドさんを指さすと、一言だけそう言った。

アルフレッド「……」

私達は顔を見合わせる。

アルフレッドさんが、決まり悪そうに首をかしげた…―。

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