第5話 シュテルの決意

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シュテル「久しぶりにあんなに笑ったら、少し……」

○○「大丈夫ですか!?」

シュテル「メテオベールの城へ」

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私達の乗った星はメテオベール城のある星に到着し、執事さんやお医者さん達の介抱の甲斐あって、シュテルさんは今、穏やかな寝息を立てていた。

(シュテルさん、ずっと具合が悪かったんだ。 私がはしゃいだから、無理して付き合ってくれてたのかな……)

シュテルさんにもらったネックレスを握りしめる。

シュテル「ん……」

○○「シュテルさん?」

シュテルさんが目を開けて、まだ揺れる瞳で私を見つめる。

シュテル「○○……?」

○○「よかった!気分はどうですか?」

シュテル「大丈夫。落ち着いた」

シュテルさんは、なだめるように穏やかにそう言った。

シュテル「そんな顔しなくていい。いつものことだから」

(いつものこと……体が弱いっていうのは、今もそうなんだ)

シュテル「……」

自分の胸元を指で辿り、シュテルさんが不安げに星屑時計を握りしめる。

○○「あ……」

その砂時計を見たとき、初めて何かおかしいことに気付いた。

(あれ?)

違和感の原因……

それは、どんなに時計の角度を変えても、砂が重力に逆らうように頑として動かないことだった。

○○「それ……」

シュテル「ああ……」

私の表情を察して、シュテルさんが小さな声を紡ぐ。

シュテル「……これは、砂時計じゃない。星屑時計と言う。 僕の残りの命が減ると、星屑が下に落ちる仕組みだ」

○○「え……?どういう、ことですか……?」

星屑時計の上部には、ほんのひとつまみほどの星屑しか残っていない。

彼があまりに事も無げに言うので、聞き間違いではないかと、何度も頭の中で彼の言葉を繰り返した。

シュテル「ああ……これはこの国の王族が生まれる時に作られるもので、寿命を知らせてくれると聞いている」

(じゃあ……シュテルさんの命は、あとこれだけ……?)

シュテル「僕の星屑は、もとから少なかった。体が弱かったからね。 これだと……あと、1、2回ってとこだな」

シュテルさんは、星屑時計をシャンデリアの明かりに掲げて言った。

(嘘だよね……?)

シュテル「まあ、それはいいんだ。やりたいことをやって死ぬなら、後悔はない」

彼の瞳は、どう見ても真剣そのものだった。

頭の中でぐるぐると考えが渦巻き、ほとんど息ができなくなってしまう。

○○「どうして、そんな風に……!それに、やりたいことって……? もしかして、さっき倒れたのも、これと関係があるんじゃないんですか?」

シュテル「……僕はもともと欠陥品だから。 星屑時計の星屑は、人の願いを叶えた数だけ落ちる。 うちの王族は、普通は信じられないほど長寿なんだ。 どんなに人の願いを叶えても、人よりも長く生きられる。 その王家に、欠陥品の僕が生まれた。 体が弱く、もともとの星屑の総量が極端に少なかった」

○○「じゃあ、もうこれ以上人の願いを叶えなければ……」

シュテル「死を恐れて臆病に生き、何もせずに生きながらえてどうなる? そんな生き方は、したくない。 もう、誰の役にも立てず、人を泣かせてばかりだったあの頃には、戻りたくない。 僕は、人の笑顔が好きなんだ」

シュテルさんの静かな声は、恐ろしいほどに澄んでいる。

渦巻く思考の中で、私は一つのことに思い至った。

○○「これは……!?もしかして、これもシュテルさんの命なんですか!?」

初めて会った時にもらった流れ星をポケットから取り出す。

○○「それに、これも……!」

シュテルさんが流れ星に願ってくれたコートとネックレス……

(お花畑も……全部シュテルさんの命と引き換えだったの?)

○○「どうして……!」

シュテルさんは、困ったように私の瞳を見つめる。

その瞳のあまりの美しさに、胸の奥が壊れそうに軋んだ…―。

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