太陽SS グルメ番組でコラボ!?

ほかほかと湯気の上がる香ばしい『おやき』を前に、私の緊張は最高潮を迎えていた…-。

〇〇「で、では。いただいてみましょう」

ユーリ「……」

ユリオ君は、カメラの前でムスッとしたまま動かない。

ヴィクトル「ほらユリオ、スマイルだよ、スマイル!」

勝生勇利「ユリオ、何か言わないと…-」

ユーリ「うっせーよクソが! なんで俺がこんなことやんなきゃいけねーんだ!!」

ユリオ君の大声に、覚えていた台詞が頭の中から消えそうになる。

(どうして、突然こんなことに…-)

ことの発端は、たまたま廻天に来ていた映画の国のプロデューサーの方と出会ったことだった。

初めて廻天を訪れた人向けの映像を撮りたいとのことで、なんとユリオ君に白羽の矢が立って……

(まあ確かに……ユリオ君、容姿もすごく綺麗だから)

彼の性格上、一人じゃ心もとないとのことで、私まで巻き込まれてしまったのだった。

ユーリ「つか、そもそもおやきって何だよ?」

〇〇「味つけした野菜やお肉の餡を、小麦粉の生地で包んで焼いたもので。 このおやきは、地元の山菜を秘伝の味噌で味つけした餡が入っているそうですよ」

(なんとか噛まずに言えた……)

安堵する私の横で、ユリオ君は怪訝な表情でおやきを頬張る。

勝生勇利「おやきって、ピロシキに似てるよね」

ユーリ「おいカツ丼。今なんつった?」

勝生勇利「え、もしかしてキレてる?」

(どうしよう……撮影中なのに)

ヴィクトル「フク―スナー」

(それに、ヴィクトルさんがいつの間にか食べちゃってる!)

ヴィクトル「確かに、味もピロシキに似てる気がするね!」

ユーリ「似てねえよ! ピロシキに謝れ、ナメてんじゃねーぞ!」

声を荒げるユリオ君に、遠巻きで見物していた湯治客達がざわめく。

〇〇「あ、あの……まだカメラが…-」

勝生勇利「ピロシキって何でできてるの?」

ユーリ「小麦粉」

勝生勇利「具は?」

ユーリ「野菜とか肉、魚も」

勝生勇利「なら、似てるんじゃない? おやきもピロシキも同じような…-」

ユーリ「黙れクソブタ。こんな草みたいな味はしねえ! いいかてめーら。耳クソ取ってよく聞けよ。 カリッとした皮の中から、肉や野菜の旨みたっぷりの餡が口の中いっぱいに広がる……。 ピロシキは、ロシア伝統の食い物なんだよ!! こんな草みてーな食い物とは、ぜんっぜん似てねえ。次言ったらぶっ殺す」

ヴィクトル「これもすっごくおいしいよ? ピロシキと同じくらい!」

ユーリ「おい、同じとか言うんじゃねー!」

机を勢いよく叩いて、ユリオ君がカメラを睨みつける。

ユーリ「ピロシキは俺の心だ。魂だ。ナメたマネしやがったらただじゃおかねーからな」

ヴィクトル「子猫ちゃん、いつになく熱いね! そういうの、嫌いじゃないよ?」

ヴィクトルさんはマイペースを保ったまま、おかわりのおやきを頬張っている。

ユーリ「いいか、生半可な気持ちでピロシキ語るんじゃ…-」

その時だった。

店主「あ、あの!!」

ユーリ「へ?」

突然現れた恰幅の良い男性に、ユリオ君は目を丸くした。

〇〇「あの……あなたは?」

店主「私はこのおやきを作った店主です。 お話を聞いていたら、ピロシキを是非とも作ってみたくなって……伝授してもらえないでしょうか!?」

ユーリ「はあ!?」

ヴィクトル「わぁお!」

勝生勇利「なんか、すごい展開になってるような……」

ユーリ「いやお前、何言って…-」

ヴィクトル「オッケー!」

ユーリ「勝手にOKしてんじゃねーよ!!」

ヴィクトル「だって面白そうじゃない? 異世界でロシアのピロシキが受け継がれていくんだよ? アメージング!」

勝生勇利「いやいやいや! だって教えるって、ユリオのピロシキへのこだわり半端ないよ?」

ユーリ「てめー……それマジで言ってんのか? あ?」

勝生勇利「ほら! 今にも噛みつきそう…-」

ユーリ「伝授してやる」

勝生勇利「ええ!? するんだ?」

ユーリ「けどおっさん、俺は食う方専門だ。作り方まで教えられねー」

店主「充分です!」

(……なんだか別の番組になってるような気がするけど、盛り上がってるからいいのかな)

ユーリ「まずはピロシキの歴史だ。ピロシキはロシアの家庭料理で、その家ごとに味が…―」

店主「なるほど、おふくろの味ですね!」

身を乗り出して近づく店主さんに、ユリオ君は華麗な身のこなしでのけぞった。

ユーリ「……そんなところだ。ファーストフードとしても人気で…-」

店主「なるほど、食べ歩き!」

ユーリ「つか、ちけーんだよ! 顔、顔!」

店主「それで? 大きさは? 色は形は? 材料はおやきと一緒なんですよね?」

店主さんは高まる好奇心を抑えられないのか、なおもユリオ君に近づく。

ユーリ「それ以上近づくんじゃねー!!!」

ユリオ君は積極的な店主さんのペースに巻き込まれ、望まれるままにピロシキについて語り続けた…―。

……

そして…-。

ピロシキについて学んだ店主さんは、私達に新しいおやきを振る舞ってくれることになった。

(いい香り……)

食欲をそそる香りが漂ってきたと同時に、店主さんが試作品を運んでくる。

店主「お待たせしました! 師匠、こちらがピロおやきです」

勝生勇利「ピロおやきって、すっごく斬新なネーミング……って、あれ?」

出された皿の上には、さっき出されたおやきと同じものが並んでいる。

ユーリ「……ん?」

ユリオ君が手に取りひっくり返すと、こんがりとしたキツネ色をしていた。

ヴィクトル「片面は油で揚げて、もう片面は焼いているんだね」

(すごい、ピロシキとおやきが融合してる)

ユーリ「ふん……」

ユリオ君がピロおやきを口に運ぶと、皮のサクッという音が辺りに響いた。

〇〇「どう?」

ユーリ「……。 悪くねー」

嬉しそうに笑う店主さんの横で、ユリオ君はふと手を止めた。

ユーリ「……でも。 どんなピロシキも、じーちゃんが作ったピロシキにはかなわねえけどな」

ユリオ君のその微笑みは、何にも代え難いほどにかわいらしくて……

貴重な映像が撮れたことに、撮影スタッフさん達は大喜びしたのだった…-。

おわり。

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