太陽最終話 心を繋ぐ作品

差し込む光が、部屋の中を柔らかく照らしている…-。

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カゲトラ『文豪の想いは、この文章にすべて込められているんじゃないかと思った。 文豪にとっての美しき月……別れを選んだ女への想い……。 それがわかるようになったのは……。 俺がそれに気づけたのは、お前がいたからだ』

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〇〇「私がいたから……?」

驚きと、それ以上に大きな喜びが、胸の鼓動を加速させる。

カゲトラ「ああ」

カゲトラさんは短く返事をすると、私の頬へゆっくり手を伸ばした。

そして…-。

 

カゲトラ「俺は……お前が好きだからな」

〇〇「!」

まっすぐな愛の言葉に、これまでで一番大きく鼓動が跳ねた。

カゲトラ「久しぶりにあの小説を読んだ時……俺は物語の主人公達に自分とお前を重ねてた。 知らず知らずのうちにな。 たとえ結ばれなくても、幸せに生きていてくれればそれでいい……。 そういった愛の形があることはわかってた。けど、理解はできなかったんだ。 俺は好きな女には傍で笑っていてほしいし、自分の手で幸せにしたいと思う性質だからな」

彼は大きな手で、優しく私の頬を撫でる。

カゲトラ「だが……今は違う。 昔読んだ時はわからなかった文豪の感情が、自然と理解できるようになってたんだ。 生きているだけで充分だと思える……心の底から愛しいと思える女と出会って」

(嬉しい……)

愛おしげに細められた瞳や頬を滑る手からも、彼の包み込むような深い愛情が伝わってくる気がした。

カゲトラ「……お前が俺と同じ解釈をしたって聞いた時、すげえ驚いた。 同時に……期待が溢れてきたんだ。お前も、俺と同じ気持ちなのかもしれねえって」

〇〇「それは……」

カゲトラ「自惚れだったら笑え。だが……。 もし俺と同じなら、応えてほしい」

カゲトラさんは優しい表情を崩さないまま、私を見つめている。

けれどその表情はわずかに硬く、緊張しているようにも思えた。

(私も……)

〇〇「私も、同じ気持ちです」

そう告げた次の瞬間、カゲトラさんの表情がさらに和らぐ。

そして彼は、私を強い力で抱きしめ…―。

カゲトラ「俺も負けてらんねえな」

〇〇「え……?」

カゲトラ「俺とお前の心を繋げてくれた、あの作品には感謝しているが……。 お前があれを面白かったって言った時、正直嫉妬もした。 作家として、さらにお前の心を動かす作品を作りてえって思ったし……。 男としても、負けるわけにはいかねえって」

〇〇「そうだったんですね」

愛おしさや嬉しさといった、いろいろな感情が混ざり合い……私は、思わず笑みをこぼす。

すると…-。

カゲトラ「こら、笑うな」

カゲトラさんはそう言って、さらに強く私を抱きしめた。

微かな煙草の香りや伝わる温かさが彼を強く感じさせて……

カゲトラ「さっきはああ言ったが……こうしてると幸せだな」

〇〇「さっき……?」

カゲトラ「たとえ結ばれなくてもってやつのことだ。 離れてても相手が幸せであればいい。それも、もちろん嘘じゃねえが……。 こんなふうに温度を感じて、笑顔を近くで見られたら……何倍も幸せだ」

優しい囁きが、心を甘くくすぐる。

(私も、ずっとカゲトラさんの笑顔を見ていたい)

〇〇「ずっと……こうしていたいです」

広い胸に身を預けながらつぶやくと、大きな手が私の頭を優しく撫でる。

その心地よさに目を細めながら、私は愛する人と共にいられる喜びを噛みしめていたのだった…-。

おわり。

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