太陽最終話 甘いデザート

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ネペンテス『あなた様を、このカボチャに埋め込み、最高潮! あのいただきへ昇るのです!』

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カボチャに私を埋め込む、という突拍子もないことを、ネペンテスさんは言い出して……

ネペンテス「逃げないでください。大事なお役目があなた様にはあるのですよ」

○○「い、嫌です……」

捕まりかけたすんでのところで逃げて、おばけカボチャハウスの隅へ逃げる。

ネペンテス「私の魂が疼き、訴えているのです。あなた様は食べ頃だ! と……」

○○「……」

再度、ネペンテスさんが私を捕まえようと両手を伸ばした時……

街の大時計が、夜中の12時の鐘を打ち鳴らし始めた。

○○「……!」

その瞬間、ぐらりとおばけカボチャが揺れる。

(ど、どういうこと?)

ぐらり、ぐらりと、おばけカボチャは不思議な動きをし始めて……

ネペンテス「……ふふ、動き出してしまったではないですか」

○○「ど、どういうことですか?」

ネペンテス「魂を……命を吹き込んだのですよ。 最高の食にするために、花の精の力を使い、精霊の魔法を少々……」

○○「そ、そんなことが……」

ネペンテス「ええ、可能です。 これに、あなた様を埋め込み、溶け合わせれば……! ああっ、考えただけで身もだえそうなほどに興奮してしまいます」

(どうすればいいの!?)

興奮して恍惚の表情になったネペンテスさんは、もう他の何も見えない様子で、自分の世界に浸りきっている。

ネペンテス「さあ、私の言う通り、あなた様を、その最高の食材を……」

と、その時だった。

ネペンテス「っ……!?」

○○「ネペンテスさん!」

しゅるりと伸びてきたカボチャの蔓が、ネペンテスさんの身体を捕えようとした。

(どういうこと?)

ネペンテス「……どうやら、過剰反応を起こしているようですね。 ふふっ……この国の食物には、花の精霊の魔法は少々、刺激が強すぎたようです。 おっと」

カボチャはネペンテスさんが話している間にも、激しく蔓を動かして攻撃してくる。

ネペンテス「このままでは危険です。脱出しましょう」

○○「は、はい」

先ほどまでのネペンテスさんとは打って変わり、正気に戻った様子で私の肩を抱く。

カボチャ部屋の扉に手をかけ、二人で押そうとしたのだが……

○○「あ、開かない……?」

ネペンテス「……何とも賢いカボチャです。 私達を閉じ込めて、逆に食べようという魂胆でしょうか……」

ネペンテスさんはどこか楽しそうにそう言う。

○○「そんな……」

ネペンテス「ではこちらも、このかぼちゃの壁を食べて脱出、とまいりましょうか」

ネペンテスさんは、こんな非常事態なのに、らんらんと瞳を輝かせて提案した。

ネペンテス「食べるのですよ、ほら」

ネペンテスさんは、壁を強引にむしり取ると、大きな欠片を口に放り込む。

ネペンテス「ん……ううん……美味」

ネペンテスさんの様子を見て、私も必死で壁を削って口に入れた。

○○「あ、本当だ……すごく美味しい」

こんな時なのに、これまで食べたことのないような美味しさに驚いてしまう。

それから私達は、必死で壁を食べ続けた。

そして……

ネペンテス「脱出しますよ!」

ネペンテスさんが、ふわりと私を抱き上げたかと思うと、そのままカボチャの穴の空いた部分から飛び出して…-。

○○「っ……」

地面へ着地する衝撃と共に、何と……パチパチと拍手が聞こえてきた。

恐る恐る目を開けると、そこには街の人々が集まっており楽しそうに笑っている。

ネペンテス「これは……何かのアトラクションと間違われたようですね」

驚きつつも、危険なのではと慌てて背後を振り返ると……

どこへともなく走っていく、おばけカボチャの後ろ姿が見えた。

○○「あれ、捕まえないと……でも、大丈夫かな……」

ネペンテス「あんなに激しく動いていれば、すぐに力は消費されて、近いうちに止まりますよ。 それにしてもです……」

○○「え……?」

ネペンテス「あなた様を、食べ損ねてしまいました。 今からでも……あなた様を、食べてしまいましょうか」

そう言ったネペンテスさんは……

○○「っ……!」

ちろり、と私の唇を舐めたかと思うと、妖艶に微笑み……

ネペンテス「ああ……やはりとても、美味しいです……」

色のある声で歌うように言いながら、ねっとりと私の唇に舌を這わせ続ける。

○○「ん、や……」

逃れようとした私の身体を、ネペンテスさんはしっかりと抱き締めて離さない。

(は、恥ずかしい……こんなみんなの前で……)

それなのに、ネペンテスさんの甘い香りと不思議な温度を伝える舌の感触に……

どんどん身体の力が抜けていく。

ネペンテス「最後に、最高の食事をいただけましたよ……。 メインのカボチャの後は、あなた様の甘美な唇がデザートです」

ネペンテスさんの舌に唇が痺れていくような感覚を味わいながら……

きつくまぶたを閉じてしまった…-。

おわり。

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