太陽最終話 多少のこと……

月夜にマントが翻る……

アルフレッド「美味しそうな匂いだ……」

〇〇「……!」

アルフレッドさんが、私の首筋に唇を寄せる。

本当に血を吸われるわけではないとわかっているのに……どくん、と激しく鼓動が跳ねた。

(アルフレッドさん……、すごく……綺麗)

何ら変装もしていないのに、月夜に浮き上がるようなその姿に瞳を奪われる。

ただただ言葉を失い、その深紅の瞳に魅入られて……

アルフレッド「可愛らしいお嬢さん、どうか私の元に……」

男の子「あ……うわあっ!」

男の子が、かなり遅れて驚きの声を上げる。

男の子「ヴァンパイア……! 本当のヴァンパイアだ……!」

突然現れた本物のヴァンパイアに街が騒然となる。

それを見たアルフレッドさんは、とても妖艶に笑って……

アルフレッド「さあ、今夜の食事は貴女だ」

〇〇「……!」

現れた時と同じように、ばさりとマントを翻して……

アルフレッドさんは、夜の闇の中へ私を本当にさらってしまった…―。

本当に私をさらったアルフレッドさんは、ホテルまで帰り着くと、くすくすと、とても楽しげに笑い始めた。

アルフレッド「ふふっ、見たかい? 男の子や街の反応を」

〇〇「はい……皆、アルフレッドさんの姿にとても驚いていて……。 本当に、怖いはずですよね。だって、本物なんですから」

アルフレッド「私は……」

(目が離せなかった……)

恥ずかしくて、黙り込んでしまう。

そんな私を見て、アルフレッドさんがフッと笑みをこぼした。

アルフレッド「……少し、いたずらが過ぎてしまったかな。 街で、貴女が本当にさらわれたと騒ぎになっていたら、申し訳ないよ」

〇〇「だけど、収穫祭の夜ですから……」

アルフレッド「多少のことは許されるかい?」

〇〇「はい、きっと」

アルフレッド「それで……どうだったか教えてくれるかい?」

〇〇「え……?」

アルフレッドさんの手が、そっと私の頬に触れる。

アルフレッド「ヴァンパイアの俺を……貴女がどう思ったのか」

〇〇「……っ」

彼の手が驚くほど冷たく感じられて、頬が熱を持っていることに気がつく。

〇〇「私は……」

何とか絞り出した声は掠れていて、ゴクリと唾を飲んだ。

私を見つめる彼の瞳は、先ほどのヴァンパイアの姿のように鋭くきらめいて……

(だけど怖くない……ただ、吸い込まれそうに綺麗……)

(どうしてこんなに、アルフレッドさんに引き込まれるんだろう……)

ぼんやりとそんなことを思いながら、頬に当てられたアルフレッドさんの手に、手を重ねた。

〇〇「とても……綺麗です」

アルフレッド「っ……」

アルフレッドさんが、はっとしたように目を丸くする。

けれど、すぐにその瞳の奥に熱をたぎらせて……

アルフレッド「危険だよ、〇〇」

すうっと私の頬を撫でたアルフレッドさんの指が、私の首筋へ流れ、ふわりと髪をかき上げる。

露わになった首筋を風が撫でていった。

アルフレッド「ヴァンパイアに……化け物に魅了されては、とても危険だ……」

〇〇「だけど、アルフレッドさんだから……」

アルフレッド「ふふ、俺が一番危険かもしれないのにかい?」

〇〇「あ……」

首筋に、唇が寄せられる。

尖った犬歯が柔肌をなぞって……柔らかに皮膚を吸い立てた。

(駄目……これだけで、力が抜けそう)

アルフレッド「本当に、美味しそうな香りがするね、貴女は……。 我慢できなくなったら、どうすればいいのかな」

そう問いかけながら、アルフレッドさんは首筋に唇を滑らせ、私の瞳の奥をじっと覗き込む。

アルフレッド「そうか、貴女がさっき言っていたね」

〇〇「え……?」

ふわふわとした心地になっていると、不意に身体を抱き上げられた。

そのままゆっくりとベッドに横たえられる。

アルフレッド「収穫祭の夜だから、多少のことは許される……と」

〇〇「……っ」

アルフレッド「お言葉に甘えて、別の方法で貴女を貪るとしましょう。 ふふ、貴女は罪な人だ。 ヴァンパイアよりもずっと、誘惑の瞳を知り尽くしている。 美しい瞳で……濡れた瞳で、俺を見るなんてね」

そう言ったアルフレッドさんが、そっと私のまぶたに手を置き、目隠しをした。

その瞬間に……

〇〇「ん……」

柔らかな感触が唇を塞いだ。

アルフレッド「本当に、可愛い人だ……」

艶っぽい声を吹き込まれ、耳たぶを食まれる。

そのまま私は……アルフレッドさんに身も心も預けきったのだった…-。

おわり。

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